ここ数か月で観たものや読んだもの、感じたこと、あと今の気持ちの整理。数か月といいつつ去年読んだ本の感想なんかも入ってます。
まだちょっと正気に戻ると苦しいので、本や漫画を読んだり甲子園を気まぐれに見たりこういうものを書いて気を紛らわせてる……推しの卒業発表ってこういう感覚だったんだねみんな(世界中のあらゆるジャンルの推しがいる人)……!!
舞台
雪組 BONNIE&CLYDE
今年2月に名古屋の御園座 で公演していたのを観に行きました。
実在のギャングカップ ルを元ネタにしたブロードウェイミュージカルで、いやーーめちゃくちゃ面白かった……!楽曲も脚本もよくて、演者もよく合ってて熱演ですごい良作を見た
これに関しては新しく文章を練るよりも見た直後のツイートの方がよっぽど説得力あるな
彩風咲奈さんが演じるクライド、夢白あやちゃんが演じるボニーがとてもとても魅力的で……特にボニーにすっかり虜にされちゃって……
共犯者になりたくないって最初怒ってたのにどんどん歯止めが利かなくなって犯罪の道にのめりこんでいく姿から目が離せない。それでも年相応のキュートな女の子なところがずっと変わらず残ってて、そのギャップがめちゃくちゃよかった。有名人となったボニーが強盗中にサインを求められて舞い上がっちゃう場面がかわいい。
客観的に見たら壮絶で悲惨な終わりを迎えるんだけど、傷だらけの体を引きずってふたりで車に乗り込んで、「死ぬこともそう悪くはないわ 残されるのは嫌だけど」って静かに笑うラストシーン。
日々いろんな些細なことに頭を悩ませ、時間と金に縛られ細々と生きている現代社 会の私たちからすると、今この瞬間のためだけに生きてるキャラク ターたちがすごく眩しい……
雪組 Lilacの夢路/ジュエル・ド・パリ!!
宝塚大劇場 公演、これはね……芝居の方は脚本がいろんな要素を詰め込んだ結果どれも消化不良みたいな……
まずドイツに鉄道を開通するプロジェクトの話をしてたと思うんだけどラストで鉄道開通までいかずレールを敷いて終わったのよ。カタルシス がないよ!「資金がない……どうしよう……」→「株式を発行しよう!」「株式?」「株式とは~(以下解説)」って社会科の授業を見に来てるんじゃないんだよ。
実は血がつながってましたーで合流する隠し子もあっさり受け入れる兄弟たちもなんか葛藤とかないの……!?とかいろいろ突っ込みどころが多すぎてもう途中から面白くなってきて逆に楽しく見ました。衣装がおしゃれでかわいかったです。
ショーのジュエル・ド・パリはすごくよかったな~~~!飾りなしのシンプルな黒燕尾からの初舞台生ロケット、曲はモン・パリというザ・宝塚、これこれ!こういうのが見たいんだよ~!!中詰ギラギラのラテンも終盤のカンカンも最高。
このショーは次の全国ツアー公演でもやってくれるので、そしてチケットとったのでまた観られるのが楽しみ!私は花組 推しなんだけど最近雪組 もいいな~と思ってるので今後も見ていきたい所存です。
ブロードウェイのハッピーコメディミュージカル、演目に惹かれて劇団四季 を初観劇しました。
良い音楽と踊りが見れたらいいな~という期待をこめて行ったんだけど予想以上にストーリーもよくて……一幕終わりの「I Got Rythm」のナンバーで、身近な道具を使って自然発生的にみんなで歌って踊るのが素晴らしく、人間の根本にある前向きなエネルギーをじかに感じてぼろぼろ泣いてしまった。
二幕での、一度諦めかけた想いをやっぱり諦めたくない!となったボビーの「Nice Work If You Can Get It」の軽やかなタップダンスも……踊る身体がなによりも雄弁だと思う。最後はみんなくっついて大団円ハッピーエンドで、カーテンコールのボビーとポリーのラブラブで楽しそうな雰囲気がすっごくかわいくて幸せだった……。
大満足でした。あと四季の方々身体能力がすげ~~~!しかしどうしても宝塚以外の舞台を見ると宝塚が恋しくなるし、この台詞はきっと彼女ならこういうトーンで言うだろうな、ここはこういう表情をするだろうな……などと浮かんできてしまう……でも気になる作品があれば観に行くのもいいね。
2024年には「黒博物館 ゴーストアンドレディ 」を舞台化するって聞いたのでこれは絶対に見たい!!
映画
1993年の香港映画。リバイバル 上映をやっていてつい先日観ました。とても良かった。
予告編のリンクを載せておくけど、予告編だけ見た時の印象と実際の印象は結構違ってたなあ……
VIDEO youtu.be
男と男の関係性に対する多少の下心があって観に行ったんだけど、観終わった後むしろ蝶衣と菊仙の間にある愛と憎しみが刺さりに刺さった。お互いに憎みながらときには母子や姉弟 のような愛があり、やさしい時間が生まれるけれど、それはほんの一瞬で基本的にずっと憎んでいる。絶対に分かり合えない二人なのに、最後に蝶衣の京劇に対する思いを誰よりも理解していたのは菊仙だったんですよね。
それまでの価値観がまるごとひっくり返ってしまう激動の時代のなかで懸命に生き、最後まで誇りを貫いて散った蝶衣と菊仙、時代の変化に適応できなかっただけというにはあまりにもむごい……それに比べて小楼はどうしようもなく小さい人間に思えてしまう。でもこの小楼という男を二人とも愛したんだよね……。
文革 と ”自己批判 ” のシーンは本当にえぐかった……。序盤の小癩の自死 、共産主義 運動に傾倒していく小四、それぞれの人生の選択がなんともいえず、誰が彼らのことを愚かだといえるんだろう。
京劇のグロテスクさと裏表の美しさ、そしてどれだけ絶望しても狂気の中にあっても、むしろそういうときに一層際立つような蝶衣のうつくしさが凄かった。忘れられない映画体験になりました。
本、漫画
三上志乃「ピットスポルム 一葉/二葉」
私とBL的な趣味が合う人はおそらく好きだと思います(私が好きな作品の例:「ボーイミーツマリア」「トーマの心臓 」など)つまり私が好きな系統の話ということなんですけど。繊細で誠実で優しくて、とっっってもよかった……。
仮面の下に傷ついた心を隠している小田島と矢野の純粋なまっすぐさ。断ち切ろうとしても断ち切れない思い、執着、恋の苦しさ……まず絵がすごく好みなんですけど、ストーリーも心情描写も繊細で……終盤のとあるページで、相手の顔を見た瞬間に自分の中で凝り固まっていたもの、呪縛やトラウマが一気に氷解していくさまがものすごく美しかった。
上下巻のようになっていて「二」で一旦話は完結するんですけど、今続編が連載されてるので単行本が出るのをすごく楽しみに待っています。
ずっと意識はしていた作品を去年の夏頃ついに読みました。映画化されているけどとても映像では見られないと思う、文章で読んでいてもトラウマになりそうなくらいしんどかった。
信仰とはなんなのか。苦しむ人々を前にして神はなぜ沈黙しているのか。正しいことだと信じてキリスト教 の信仰を広めた、その結果人々は棄教を迫られ拷問を受けている、われわれのしたことは本当に正しかったのか?はてしなく重い…………
(まず大前提として拷問する方が間違っているということは忘れちゃいけないと思う。棄教さえすれば助けてやるというのは温情でもなんでもない)
ロドリゴ の問いはタブーに触れていて、聖職者が神の存在について疑問を抱くなんてとんでもないことなんだけど、でも無条件に神のことを信じている人が本当に正しいんだろうか?もしかしたら疑問を抱く人の方がずっと神について考えているんじゃないかという可能性はないんだろうか……なんて……
ただこれは遠藤周作 が自分自身の信仰について問い直しながら書いた結果であって、キリスト教 のことを何も知らない人が都合よく「神の沈黙」について持ち出すのは違うんじゃないかと思う……と書いている私も部外者だから何も知らないんですよ。うーん難しい……
今村夏子「むらさきのスカートの女」
文庫版が出たら読もうとずっと思っていた。<むらさきのスカートの女>をただひたすらに淡々と見つめ続ける<わたし>、読んでいるとだんだん<わたし>の異様さが増していって、異様な存在のように見えていた<むらさきのスカートの女>はだんだんなんということはない人に見えてくるんだけど……
読んだ直後にこんなことを書いていたらしい。価値観の根本を揺さぶられるような感覚が面白かった
巻末に収録されている芥川賞 受賞記念エッセイがまたすごくおもしろいんですよね。自分の書いた文章が気持ち悪いから家に自分の本を置いていないとか、テレビで自分の本を取り上げているのを見たくないとか……。作家ってみんな自分の文章が好きで見せたいから本を書いてるんだと思ってたよ。
村上春樹 と気が合うかというとそうではないんだけど読んでいて面白い。
意識高いとかって揶揄する風潮があって敬遠してたんだけど(こういう人多いだろうけどあまりよくないよね、せめて自分で読んでから判断しよって思いました、自戒)短編だったらときどき手に取ってみようかなと思ってます。長編は「色彩を持たない多崎つくる~」を読んだけどわかるようなわからないような、なる……ほど……という感じで私にはまだ少し早かったのかもしれない。
この短編集2作はどちらもいいなと思いました。特に「一人称単数」が全体的に好感触で、その中でも「ヤクルト・スワローズ詩集」は少しテイストが違っていて、村上春樹 という人のことを身近に感じるようで面白かった。
柚香光さんのこと
退団、と文字を打っていても、これが現実ですでに決まったことだと理性では分かっているんだけど、まだどこか現実だと受け止めることを脳が拒否しているような感覚がある。いつか必ずその日が来ることは分かっていたのに、それでいいと思っていたのに、いざ知らされてみるとこんなに苦しいのかと……みんなこういうのを乗り越えてきたんですか……!?
3日経って記者会見の写真やインタビューを読んだりして、今は少し落ち着いて前を向き始めているけど、最初は本当に胸が苦しくて食事ものどを通らないくらいだった。3次元の人を本気で「推す」というのが私は初めてだったので、この胸の痛みもこのひとをこんなに好きな証だから今のうちに味わっておこう……みたいな現実逃避混じりの謎のテンションにもなった。
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2020年9月5日「はいからさんが通る 」大劇場千秋楽、配信で見ていたこの公演の衝撃をずっと覚えてる。こんなにも感情が迸る芝居があることを初めて知って、舞台の上で身を削りながら輝く姿に目を奪われて、カテコの挨拶で涙を流しながら語っていた言葉を聞いて絶対にこの人についていこうと思った。
それから本当にありがたいことに何回も主演の舞台を見させてもらって、見るたびにどんどん輝きを増していって、魂が震えるような瞬間が何度もあって……。
あるとき彼女が「舞台に生かされている」というワードを発して私はすっっっごい衝撃を受けた。まず天堂真矢!!と思いました。リアルで全くの本心からこれを口にする人がいるんだ。
また別のときに「どれだけやっても命果てることはないでしょうから」とさらりと言っていたのがものすごく印象に残ってる。そのストイックな覚悟も、悲壮感というよりはどこまでも舞台が好き!という気持ちから生まれているように見ていて感じるんですよね。
実際には苦しいこともきっとたくさんあったと思うけど、いつ見ても舞台に立てる喜び、舞台が好きだという気持ちが全身からあふれているようで、そんなところがすごく好きです。
繊細な感受性、芸術的センスと聡明さ、軽やかでしなやかであたたかい人。
公式プロフィールの「好きだった役」の欄を毎年律儀に更新して文字数の上限ぎっちぎちに役名を並べているところも好きです。
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これまで3年と数か月彼女を追いかけ続け見てきた中で好きな公演がいくつもあって、どれも思い出深いけど「巡礼の年」はテーマといい演じていた役の人物像といい特にささったなあ。
2022年よかったもの振り返り - なにか_a (hatenablog.com)
↑今読むとこんなこと書いてたんか……と新鮮な気持ちになる。新鮮にわかる~~と思ってしまう、自分で自分に解釈一致してる
退団(←深呼吸しながらこの文字を打ってる)の時期が近いことはなんとなく察していたけど早くて次々回作だと勝手に思っていた。近いとはいえまだでしょってね……
でもこの2~3週間の公演を見ていたら、これはもしかして覚悟しないといけないんじゃ……みたいな感覚があったんですよね、後出しじゃんけん のようなことを言ってる自覚はあるけど……というか気のせいだと思いたかったよ。
デュエットダンスを見ていて途中からボロ泣きしてしまった回があった。踊っているふたりが本当に本当に美しくて、互いを見つめる表情があまりにも幸せそうで切なくて苦しくてこんなに愛しあっているんだと思った。