なにか_a

@matiya_a

2023年ふりかえり(舞台・美術展など)

1~9月は毎月なにかしら観劇してたんだけど、それ以降は劇場に足を運んでおらず(見たい公演はチケットが取れなかったり飛んだりした)1月も観劇の予定がなく、なんとも微妙な気持ちで年末を過ごしている……。

しかし思い返すと素敵な体験をたくさんしていて、今年もかなり濃い1年だったなと思います。いきなりテンション低めの書き出しになってしまった!去年の振り返り記事くらいのノリで、特によかった・印象に残っているものについて書いていきます。

去年の→ 2022年よかったもの振り返り - なにか_a (hatenablog.com)

 

 

花組うたかたの恋/ENCHANTEMENT」

うたかたの恋」については前に感想記事を書いてるんですが、最終的にはこのときと全く違う印象の作品になってたんですよね……最後の数日間での変化が凄かった。

 

今回の再演で追加された政治的背景だったりルドルフの闇といった要素はもちろん重要なんだけど、やっぱり一番のテーマは「恋」で。公演を重ねるごとに毎回それぞれの演じ方が変わっていて、悲痛さが強い回もあったし病んでて闇が深い回もあった(それはそれでめちゃくちゃ好きだった)。そうやって試行錯誤しながら作品を突き詰めて突き詰めて、削ぎ落して、行きついた先にあったのはただ純粋な恋と愛だった。ラストの白い衣装で踊るふたりを見て、これがこの恋の結末だったんだなと心から納得できた。

マリーは何も知らない少女でも、すべてを受け止める聖母でもなく、一人の人としてルドルフを愛したから、自分の意志で選んだんだなあ……。死ぬということの恐ろしさを感じているけど、それでも最後まで一緒にいたかった。あなたと一緒ならこわくないって自分に言い聞かせて、寝室の場面ではもうふたりともぼろぼろ泣いていて……。

ショーの「ENCHANTEMENT」は本当に華やかで綺麗で、これはオタクの願望の具現化……?というのが次々出てきて(いろんな意味で)最初から最後まで夢のようなショーでした。さまざまなジャンルのダンスシーンがあって、場面によって優雅なダンスもあれば抜け感と遊び心があったり、セクシーだったり、感情を爆発させていたり、どれも素晴らしかった。あと出てくる人出てくる人美しすぎてそんなことある??

3/5の柚香さんお誕生日公演では組子たちからアドリブでこれでもか!!と祝われ、客席も幸せな雰囲気に包まれていて、好きな人が周りの人たちに愛されてるってめちゃくちゃ幸せなことだね……。

 

雪組「BONNIE&CLYDE」

まずストーリーがとても面白かったのと、舞台上の隅々まで演者の熱量がすごかった!特にトップコンビの持ち味によくはまってて、対等にぶつかり合ってエネルギーが爆発する感じがすごく魅力的でした。

作中で描かれるボニーとクライドの刹那的な生きざまは格好よくもあり痛々しくもある。苦しさ、怒り、高揚感、満たされなさ、いろんな感情が渦巻いてて、綺麗なだけじゃない人間のリアルみたいな。でもその生々しさこそが魅力的だった。彼らがやったことって絶対真似したら駄目な犯罪なんだけど、ままならない世の中で細々と生きてる私たちからしたら爽快だし憧れに近い気持ちも抱いてしまう……。

名シーンがたくさんあったけど、その中でもボニーとブランチの「愛は選べない」のデュエットがとても印象に残っています。娘役と娘役が感情ぶつけ合ってデュエット歌うのって珍しいけどもっと見てみたいな。

 

花組「二人だけの戦場」

脚本がなかなか見ないくらい素晴らしくて、そして本当に名演でした。こんな芝居ができるんだと衝撃を受けた。演じているというよりもその人物としてリアルな人生を生きているみたいで、芝居ということを忘れて作品世界にのめりこんで観るような感覚だった。

この公演があったのが5月上旬で、今いろんなことを思うけど……自分たちの国を持ちたいという感覚って私たちには想像がつかない部分があるし、相手のことを思いやっているつもりでも無意識の傲慢や無理解があるかもしれない。一方を助けることがそのまま一方を傷つけることになる。何が正しいかわからないし何もできないかもしれないけど、考えることをやめたくはないって思う。「二人だけの」はティエリーとライラのことでもあり、ティエリーとクリフォード、ハウザーとシュトロゼック、シュトロゼックとアルヴァ……挙げるときりがないけど無数の「二人」がいて、それぞれに互いにしか分からない戦いがあるということなのかな。

 

明日がどうなるか分からないシビアな状況の中で二人は出会い惹かれあっていく。それを戦争に引き裂かれた悲劇という描き方をしないところが私は好きで、そういう状況下でも人を好きになったり、友人と笑いあったりする、人間の”人間らしさ”へのあたたかいまなざし。ティエリーとライラの恋は丁寧に描かれていて、本当に純粋でまっすぐでみずみずしい恋だった、ラストシーンがまた素敵でさ……。押しつけがましくなくさらっとした、でも深い愛のある結末なんだよね。

 

花組「鴛鴦歌合戦/GRAND MIRAGE!」

「鴛鴦(おしどり)歌合戦」肩の力を抜いて観られる、悪人のいないハッピー時代劇コメディ。たくさん笑ったな~!登場人物がほぼ全員様子がおかしくてずーっとたわいもないことをしてるんですが、主人公だけがほんのり影のある二枚目で存在がひたすら格好いい。でも最後にほろっとする展開があって。

礼三郎は願っても手に入れられなかったりいつか失ってしまうくらいなら最初から何もいらないことにして生きてきた人なのかもしれない。お春ちゃんと出会えて本当によかったね……でも周りの人々もみんなあなたを愛してるから大丈夫だよ。「誰だって、いつだって幸せになっていいのよ!」10月の大千秋楽を配信で観ていて、大団円の場面でみんな泣きながら笑っていた光景をずっと覚えてる。

 

「GRAND MIRAGE!」シーボーネー!!(声に出して言いたい)どの場面も選べないくらい好きでした。トップコンビで組んで踊る場面がたくさんあってそれも本当にうれしかった。いつか観劇したときにフィナーレのデュエダンでめちゃくちゃ泣いた回があって、それまでもこのふたりのダンスは本当に特別で素敵だって、ずっと思ってたけど、泣いたのは初めてだったので自分でもびっくりした。その後退団発表があって、ものすごくショックだったけどどこかでやっぱり……みたいな……そういう心の結びつきとか、愛が目に見える奇跡みたいなことって本当にあるんだよ。

 

阪急×ちいかわコラボやってて規模がすごかった。三番街の至るところにちいかわが…

 

花組「BE SHINING!!」

現地には行けなかったから配信とライビュで観ました。すーーーーっごい満足度!!

コンサートだけどショーでもあったし、過去の公演のメドレーやミュージカルメドレーは芝居を見たような濃密さがあって、本当にすごかった……同じ衣装とメイクなのに曲が切り替わるごとに一瞬で表情も立ち方も変わって、次々と人格を変えて歌っていくのが圧巻だった。特にやっぱりエリザベートはよかったなあ……初めて見るタイプの人物造形で、これを見てしまうと本公演でエリザやってほしかった……!!

ショー主題歌メドレーは否応なくテンション上がって楽しい!J-POPの曲もいくつか歌っていて、「プレイバック Part2」が本当によかったですね……。個人的に百恵ちゃん好きだし、曲も衣装もめちゃくちゃ似合っててただただ私得な時間だった。

パフォーマンスも素晴らしかったし出演メンバーの楽しそうで和気あいあいとした雰囲気が伝わってきてほっこりした!とにかく愛があふれていて最高の公演でした。

 

こっからは美術展の話!

大阪の日本画(大阪中之島美術館)

中之島美術館に初めて行った!

これまで割と西洋画ばかり見てきたけど、日本画の繊細さや美人画の女性ってすごく好きだな……と気づいて最近興味を持っています。島成園が全体的にとても好きなのと、《殉教者の娘》(三露千鈴)という絵がすごく印象に残った。女性画家が活躍していたことも知らなかったので、このあたりの作品はこれからアンテナ張っていきたい。というところで今度「女性画家たちの大阪」展に行きたい!

 

エゴン・シーレ展(東京都美術館

エゴン・シーレの作品をじっくりと見るのは初めてでした。

実は花組観劇のためかなり余裕をもって東京駅に着いたらたまたまポスターを見て、午後公演だし行けるぞ!ってことで急遽行ったという経緯がありました。この日上野では春の音楽祭をやっていて、駅でショパンを弾いてる人がいたり文化会館前ではサックス四重奏のグループが演奏していて、小雨が降るなか桜が例年より早く咲いていてこんな素敵な場所ってある……!?とこの時点で最高だった。

昔はシーレの絵ってちょっと生々しくて怖い印象だったけど今は不思議と親しみを覚えるというか、裸体の自画像や女性のスケッチもいやな感じはしなくてすっと自分の中に入ってきた。一見グロテスクにも思える身体の造形も、ベースにすごく正確な人体構造の理解があるんだなって分かりました。官能的だったり翳りのあるような作品が多い中でひとつだけ、妻を描いた優しいタッチの絵がとても心に残って、彼女がこの人にとっての小さな青い花だったのかもしれない。

同時代のウィーン分離派の芸術家たちの作品もまとまって展示されていてそのあたりも満足度高かった。個人的にコロマン・モーザーのキンセンカの絵が鮮やかですごく印象的だった!ポスターデザインの人というイメージだったけどこんな素敵な絵も描いていたんだな~。

 

テート美術館展 光(国立新美術館

テート美術館展、楽しみにしていたけど前半は人が多すぎて落ち着いて見られずいくらかスルーしてしまったのが心残りで……。でも後半の現代美術のゾーンは多種多様な作品があって、特に《レイマー、ブルー》(ジェームズ・タレル)というインスタレーションがすごく面白かった。真っ青な光で満たされた部屋の中に入ると最初はうわ青っ!ってなるんだけど、だんだん自分の輪郭が空間に溶けていくような、頭でいろいろ考えていたのがすーっと静かになるような感覚で、ずっとそこにいてしまいそう……。

他に絵画や写真作品もたくさん展示されていたけど、ターナーのアカデミーでの講義資料で、光が差し込んだ時に部屋の中にどんな影ができるかというのを細かく解説した図があってすごかった。もはやおそろしかった、全部理論なんだ……神絵師って……。

《星くずの素粒子》(オラファー・エリアソン

作品自体もすごく綺麗だったけど作品解説が好きだった。抜粋して引用させてもらいます。

”宇宙の広がりと儚さ、その中で私たちの居場所を探る方法としての光” 

”半透明の作品はミラーボールのように回転して輝き、その光は拡大された星くずの素粒子、もしくは爆発した星の残骸のような模様を壁に映し出します。スポットライトは作品を照らし、展示室内やそこを通り過ぎる観客に複雑で幾何学的な影を落とすのです。”

 

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こうして並べてみると結構いろんなものを見たんだな~!5月に長崎旅行したのもすごくよかったです。長崎旅行の記録 - なにか_a (hatenablog.com) 

今年は特によく観劇したけど来年はどうなるかまったく未知数……とりあえず2~5月の退団公演は腹くくって通います。その後は本当にわからん!!1年後の自分がどんな気持ちでいるのか全く想像がつかない。

2024年はいろんなことが良い方向に向かっていってほしい。好きな人にはやっぱり一番幸せでいてほしいし、みんな幸せであってほしい。舞台の出演者だけでなく裏方のスタッフさん含め、誰もが安心して舞台に取り組める環境になることを願ってます。

 

花を見た年でもありました。来年もたくさん見たい!