なにか_a

@matiya_a

ミュージカル「最後の事件」

「互いにナイフ向けたまま立ちすくんでる」

「私を利用しろ そうすれば書けるだろう」

「君が思うほど甘くない」

「なぜワトソンを巻き込もうとする?」「友人を利用したのか!?」

「私はこの状況を楽しんでいる だが……」

 

 

雪の日に観に行ってきた。シャーロック・ホームズと作者のコナン・ドイルを題材にした韓国ミュージカルの日本初演バージョンらしい。

出演者は二人きりで伴奏はピアノだけ、ほぼ歌で物語が進んでいき、100分間にぎゅっと凝縮されていて濃密で良い作品だった。小さめの劇場で歌声で空間がびりびり震えるの、すごかった……。

ホームズとドイルなので話は知っての通りで、結末も予想外なことはないけど、そこに至るまでの感情の動きが面白くて引き込まれる。見終わった後の余韻……解釈こねくり回しすぎないうちにまだ新鮮な感想を書いておきたい!

 

各トリプルキャストのうち、髙橋颯さんドイル、渡辺大輔さんホームズの回。まず言いたいんだけど渡辺大輔さんのホームズはあまりにもホームズだった。天才的な頭脳を持ち自信に溢れ、登場シーンからまだ一言も発していないのに存在感が凄い。そして歌いだしたときのぞくっとする低音ボイス……。コートを完璧に着こなし、一挙手一投足が洗練されていて美しく様になる……深く豊かな響きの声、ドイルの前に立ち塞がる圧倒的強者のオーラ、時折プライドの高さが滲み、一方でふと見せる優しさや慈愛、無邪気な純粋さも印象的で……。

 

パワーバランスはホームズ>>ドイルという感じで、イニシアチブを握るホームズと翻弄されるドイル…かと思いきや、その奥に創造主のドイルと作られた存在のホームズという主従関係が横たわっているのがとても絶妙だった。ドイルが書いてくれないと何もできないことをホームズは自覚していて、そういうものとして受け入れている。ドイルが執筆を休みたいと言ってもあっさりと君がそうしたいならいいよ、という感じだし、歴史小説に対してもどうせ売れないと言いつつそこまで嫌な顔はしない(自分が捨てられるとなると別だけど)。ワガママ放題に見えてホームズのほうが結構一途というか健気というか……その意外性は、多分このキャストの組み合わせだからより際立ってて面白かったと思う。

 

励ましのための言葉ではなく、「私という世界最高の探偵を生み出したんだから、君は世界最高の作家なんだよ」とすごく純粋に信じていそうなホームズ。

事件の気配にいつも前のめりなホームズ、退屈すぎてジタバタしてるホームズ、ジタバタしてるときにドイルが帰ってきて何事もなかったかのように取り繕うホームズ、かわいいやつ……。

 

あとメンタルもフィジカルも基本的に強そうな渡辺ホームズなので、弱ってる場面がちょっとなんか……直視したら狂いそうで……首を(自主規制)で足をばたつかせてもがくところとか、傷を負って痛みに耐えているところとか、ね……

向けられたライフルを掴んで銃口を自分の額に押し当てるの声出そうになった。煽り力高すぎてこわいよ

 

ドイル側の感想。ドイルがワトソンのことになると感情的なのが気になって、言うて自作の登場人物にすぎないのに……と考えたけど、ホームズとワトソンの友情がそのままホームズとドイルの友情に重なるからなんだろうな。劇中でドイルはワトソンになり、モリアーティになるけど、ホームズを愛し守りたいドイルの分身がワトソンで、ホームズを憎み殺したいドイルの分身がモリアーティ なんだろうね……。

 

一人で思いつめた末の、あの苦悩に満ちた「……始めようか」でウワ~~~ってなっちゃう。

髙橋颯さん、歌に感情がすごく乗ってて、まっすぐでキラキラしたいい声だった。フレッシュさが素敵だった。さすがに?というか、酒を煽りながらぼろぼろになって執筆してる場面はまだまだ伸び代を感じた(ご本人にそんな経験がなさそうである意味安心する)けど、モリアーティを演じるときの生き生きとした悪役ぶりが意外な輝きだった。

ホームズを追い詰めているときは、狂気というよりもこれしかないと思って必死でやってる感じが伝わってきて、そんな一生懸命なドイルだからホームズがスッと赦してしまうのもわかるなあ……。

ドイルの部屋から221Bの扉が消えてしまったときに一番喪失感があった。舞台セットも秀逸でよかった。話としてはあそこで終わりだけど、いずれドイルがまた書きたくなったときに、以前と何も変わらない様子のホームズが「新しい事件か?」とニコニコ上機嫌でやってくる図が目に浮かぶ。

 

さわやかに終わったようで意味深なラストが印象的。

ドイルがホームズに父のことを語る場面ももう一度しっかり見たいのと、「過去に閉じ込められる」の解釈は次観るときにまた考えてみたい。

 

 

 

元々は結構先の1回だけ取ってたんだけど、公式が発信する稽古場映像を観ているうちに髙橋颯さんが気になって割と直前にチケット追加したのでした。前評判のわからない作品だからどうなんだろうと思っていたけど追加してよかったな~

 

 

カテコだけでも大輔さんは格好よさが極まっているし、きっちり手をそろえて深くお辞儀している颯さんの絶対いい子なんだろうな……という感じがすごい。

 

2025年振り返り(舞台とか映画とか)

今年は月ごとに書き出してみる。

 

1月

マチュー・ガニオ スペシャルガラコンサート(フェスティバルホール

新年早々に初現場だった。バレエ自体興味はありつつも生で見るのが初めてだったし、世界的なダンサーの美しい踊りを見られてとても貴重だった。開幕までに色々あったけど、二部で一緒に踊るふたりの美しさと、言葉はなくても踊りの中で会話しているような、楽しそうで幸せそうな様子を見ていたらそれがすべてだなと思った。

終演後にマチューさんと上野水香さんによる鏡割りが行われた。豪華……!

 

あと数年ぶりに夢の国へ行った!新しくできていたベイマックスのハッピーライド、ただ楽しい曲に合わせて乗り物に乗るだけなのになんであんなに楽しいんだ……待ち時間すら楽しい……という驚きと、ソアリンは感動やら感慨やらいろんな思いでガチ泣きした。「冒険とイマジネーションの海」という言葉の深さ。子供のころは与えられるものをただ楽しんでいたけど、大人になってから行くとパーク内の仕掛けひとつひとつにもこれを作っている人がいるんだ、ということを考えたり、人の想像力や夢を見る力ってすごいな…と圧倒されたり見え方が変わっていて面白かった。

 

2月

映画「ベルサイユのばら

とりあえず1回は観る!と思っていたけど、予想以上に良い作品でリピートして何度か観た。感想はこちら↓

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3月

ファンミーティングに行った。

なんといってもイベント後のお見送りがすっごかった。会話なしのお渡し会のようなものだったんだけど……照明もないただの廊下で目の前で見て、骨格や等身バランスが常人とあまりにも違う……あとなんか発光してる……ってひたすら圧倒されたのと、まっすぐにしっかりとこちらの目を見てお土産を手渡してくださるのがすごい、瞳の引力がすごくて吸い込まれそうだった……。

 

4月

NHK青春アドベンチャー「海の綺士団」(ラジオドラマ)を聴いていた。1話15分、月~金を3週間にわたって全15話、毎話時間になるとスタンバイして聴いていたの、本当に輝いていた日々だった……そして話がとても面白かった!ラジオの放送と前後して原作コミックも読んでそちらにもかなりハマった。ラジオという制約の上でこう表現するんだなとか、音声だけだからこそ集中して声の細かなニュアンスを感じたり、想像をかきたてられたり……キャストも素晴らしかったし脚本の言葉や音楽も美しかった。実際マルタに行って海を見てみたい。

 

5月

劇団☆新感線鬼物語(SkyシアターMBS、シアターH)

出来事として何が起こるか以上に登場人物の感情が揺れ動くところを観たい派なので、そういうところは合っていたなと思う。ずっと苦しくて生きているのがつらくて、そんな中でただ一人の存在に生きる意味を見出して、でも一緒に生きていくことが現実として難しい。諦めてしまえば済む話と言われて、そんなの私が一番わかってる!っていうどうにもならない叫び。紅子がただの悲劇のヒロインではなく、彼女自身のエゴで周りを巻き込んでいる部分もあって、運命に押しつぶされそうになりながら必死にもがいて生きていたところが好きだった。

大阪公演メインで観劇し、東京公演(7月)は1回だけ観た。脚本が加筆修正され各登場人物の考えていることが分かりやすくなった反面、初期脚本の説明しきらない感じが、人は結局自分の思いにしたがって動いていて、その人の全ては他人にはわからない、と感じられて私は好きだったので、その味わいは薄れてしまったような……大阪公演終盤の雰囲気が一番好みだったかも。

 

あと万博も夕方から夜間券でちょろっと行ったよ。

 

6月

映画「国宝」

ベルばらのときに毎回予告編が流れてて、「ほんものの役者になりたい」の台詞に心をつかまれずっと気になってた。実際に見て、私としてはうーん言われてるほどでは……みたいな……。絶賛の感想をたくさん見るのでよりそう感じたのかもしれないけど、もう少し深掘りしてほしいところが多々あり、特に女性陣の描写の薄さが、男たちを支えるためだけの存在じゃないんだぞ!と気になってしまった。あと二人の関係がきれいな男の友情すぎてもっとドロドロしてほしかった(正直)。でも印象に残るシーンも多く、3時間の上映時間は長く感じなかった。

好きなシーンはお披露目の二人道成寺のドキドキ感とみずみずしさ。後半の曾根崎心中、登場人物と役者本人の思いが交じり合い、おそらく本当に客席でこの上演を観ていたら一生忘れられないだろうという凄み……でも基本的に万全のコンディションじゃない人が舞台に立つべきじゃないと思う。血反吐を吐くような、を超えて本当に血反吐を吐いているレベルのものを観て感動するってのもどうなのか……というのが舞台鑑賞する側の人間の気持ちです……。

 

花組悪魔城ドラキュラ/ 愛, Love Revue!」(宝塚大劇場

悪魔城~は原作ファンの方からたくさん反響があってよかったと思うけど私が求めてるものとは違った感。いや、設定も美味しいしストーリーも悪くないはずなのに、脚本と演出が合わなかったんだと思う……。ビジュアル面は言うことなしで、美咲ちゃんはあの衣装の着こなしっぷりが二次元すぎて驚き!

愛, Love~はここ2年くらいのショーで一番くらい良かった!私が宝塚に求めるものがふんだんに詰まっていた。全場面が良いけど、一番テンション上がるのはやっぱりBad Powerからのジゴロ。全国ツアーなどで度々再演しているけど、大劇場のフルメンバーでやると大迫力すぎて本当に面白い。

 

万博2回目、今度は朝から晩まで丸一日回った!

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7月

BURN THE FLOOR(フェスティバルホール

今年一番楽しかった現場、まさにハートに火が付くような体験だった!海外の一流のダンサーたち、身体能力が圧倒的だし華やかさもすごい。色とりどりなダンスの洪水。その中に混ざる柚香さんの存在の仕方が絶妙で、男女ペアのダンサーが基本の中で固定のペアなく自由に踊り、時に歌も歌う。体のラインが出る衣装でもなお(だからこそ一層)アンドロジナス的な雰囲気が際立っていて、女性ダンサーやシンガーとちょっと絡む場面があったりして、とても自由で、これからもずっとあらゆる枠にはまらない存在でいてほしいと思った。

どのダンスもよかったけど、芸術的で物語を想像させるスパニッシュの場面や、「River」「Man's world」の女性の強さが特に良かった。ゲストアーティストにかかわらず、再来日したらまた足を運びたいな……と思う良い舞台だった。

BE BRAVE. NO BOUNDARIES



 

8月

月組 「GUYS AND DOLLS」(宝塚大劇場
雪組「パリのアメリカ人」(御園座
劇団四季「ゴースト&レディ」(名古屋四季劇場)

8月はよく観たな~。そしてどれも秀作だった。やっぱり私はゴスレが好きなのでここではその話を書きたい。以前のゴスレ感想↓

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谷原さんの、静かながら何者にも曲げられない意志の強い眼差し、芯のある歌声はまさにフローそのもの。以前に観た萩原さんのグレイは原作の雰囲気に近く、シニカルな大人の男性という印象だったけど、加藤さんのグレイは若々しく等身大で、ボーイミーツガール的なピュアさのあるフローとグレイだった。岡村さんのデオンが冷酷で冷静な暗殺者なら、宮田さんのデオンは激情ほとばしるバーサーカーで、フローへの執着よりも、自分を蔑ろにした社会への激しい怒りを感じた。

私の推しのデオン様です

 

9月

特に何もなし!

 

10月

急に思い立って日帰りで京都嵐山に行った。このとき仕事のストレスがかなり高まっていてそこからの逃避でもある。福田美術館で上村松園展を見るのがメインの目的で、展示も良かったし美術館自体がすごく素敵だった。また行きたいな……。天龍寺の庭園で膝をやられそうになりつつ散策したり、鹿王院の静けさの中で青もみじと仏像を見たりするなど、した!

 

 

11月

ミュージカル「マタ・ハリ」(配信)

ふと興味を持って配信を観たら意外とドはまりした作品だった。ストーリー展開には突っ込みどころがかなりある、ただ廣瀬ラドゥーが……良すぎて……。

仕事を忘れて恋にのめり込む人間が一番嫌いなのに、そうなりつつある自分を自覚して蔑んでいて、破滅衝動を抱えていながら破滅しきれない。芝居として演じるのと別に否応なく滲む廣瀬さん本人の個性というか、優しげで甘い顔立ちとしっとりとした声、体格の良さからくる威圧感なんかも合わさった絶妙な人物造形だった。

「二人の男」という激ヤバ巨大感情ソング、アルマンを糾弾しているはずの言葉が全部自分に返ってきて、どんどん追い詰められていくラドゥーと、上官にブチ切れられてもマタへの愛が全てと堂々としている和樹さんアルマン。でもやっぱり死ぬのは怖い、というアルマンの無敵じゃない弱さが好き。ラドゥーはラドゥーでアルマンを100%憎んでいるわけではなく愛情もあるのに、結果的に死に追いやってしまう。そこに至るまでに軍人としてそうせざるを得なかった、の中に私情が全くないかというと嘘になる、それも自覚しているわけで……かわいそうな人……。愛希さんのマタは画面越しでも生命力にあふれていて、内側から光り輝くような美しさだった。

 

 

12月

ミュージカル「十二国記」(日生劇場

今年の締めくくりはこの作品。日生劇場は初めてだったけど建築が美しくてすてき!劇場内も海の中のような造形で、作品の世界観ともよく合っていた。年明けにも観劇予定があるので感想はまた改めて書きたいな!

 

美術展

上村松園生誕150年ということで各地で展示をやっていた。1回目は5月に大阪中之島美術館で、紅鬼物語を観劇しているタイミングでちょうど日本画の展示をやってる!と気になって見に行った。たくさんの作品が展示されていた中で「花がたみ」はすごく心に残った。

・2回目は嵐山の福田美術館で。松園を中心に美人画を集めていてじっくり見た。上村松園の描く女性は凛として清々しいのに対して、鏑木清方の描く女性は清らかさの中にふんわりと香る色香とたおやかさ……と、大枠としては同じ美人画なのに比べて見ると雰囲気が全然違うのが面白かった!

 

そのほか

・ミュージカル化をきっかけに読み始めた十二国記シリーズが面白い……。月の影→風の海→東の海神→風の万里→魔性の子 まで読んだ。話としては今のところ東の海神と風の万里が好き。強く生きるためのヒントを与えてくれるけど、精神が健康なときでないと読むのはちょっと辛いかも…と思うくらい自分の生き方を容赦なく問い直される。小野不由美さんの文体は私に合っててすごく読みやすい。

・村山沙耶香さんの短編集「信仰」の表題作があまりに強烈だった。「コンビニ人間」とかもそうだけど、村山さんの作品の違和感を抱えたまま進んでいくところとラストに向かって急加速していく感じが好き。

・1789(2018年公演)のDVDを買って観た。小池徹平さんロナン、神田沙也加さんオランプのバージョン。これ以上のキャストはないのでは?と思うくらい全員の魅力が光っていてすごく良かった……。

 

2026年の前半は予定が固まりつつあり、今まで観ていなかったジャンルの作品も見られそうで楽しみ!今のところ後半は全く未定だけど、どんな作品が待っているんだろう?最近は趣味に関してある程度割り切って、以前よりも力まずに気楽に楽しめるようになった気がする。これからも自分のペースでやっていくぞ~!!

万博に行ってきた!

1回目(5月中旬)

海外パビリオン一点集中の万博レポです。もともと万博行ったるぞ!とはそこまで思ってなかったんですが、開幕していろいろ情報が流れてきて気になり始め、大阪で用事があったついでに1回目夜間券で行ってきました。

平日の夕方で人はそれほど多くなく、17時前に入場ゲートに到着して待ちなしで入れました。今は平日でももっと混んでそう。

事前に軽く下調べをしていくつか行きたいパビリオンの候補を決めていたけど、いざ会場に行ってみると想定より入れず……(どこも結構並ぶorそもそも並ぶことすらできない)ということでその場その場の気分で回ってたけど結構楽しめました。

入場して最初にしたことはとりあえず入り口のミャクミャクの写真を撮る!これが大屋根リングか~これが万博会場か~~!という空気を味わう!

エスカレーターで大屋根リングに上ってみた。ポルトガル館の吹き抜けになっているところでギターの演奏をしていて、その哀愁ある音色と夕方のけだるい空気が相まってすごく素敵な時間だった……。

 

マルタ館

この日の最初の目的地だったマルタ館。ちょうど中世のマルタ騎士団を舞台にした作品に触れていたところで万博に出展してるのを知ったので!建物入り口の大きなディスプレイに海や遺跡などマルタの風景が映し出されていて、そこだけ空間を切り抜いたみたいに見えて素敵だった。

 

マルタ騎士団の甲冑と、同時代の日本の甲冑のコラボ

紀元前2世紀の遺跡からの出土品

現代のアーティストによる作品とか

中の展示はコンパクトで古代からの歴史と工芸品、あとはマルタのPR映像を映していて座って見れるようになっていた。

外の売店でフティーラ(マルタ伝統のパン)とビールを買った。フティーラはこの日、中の具が売り切れてしまい急遽ハム卵で代用していると気さくな店員さんが教えてくれた。生地がもっちりと噛み応えがあって美味しかった!ビールは持って帰って家で飲みました。

 

その後コロンビア館の前を通りかかったのでコーヒーをテイクアウトしました。まろやかなカプチーノで美味しかった。この日会場で食べたものはなんとこれだけです。パビリオン巡りをしているとレストランや売店に並ぶ余裕が全然なかった!

 

チェコ

チェコ館も下調べ段階で気になっていたので入れてよかった〜。

外にあるガラスの柱や、外壁に使われているガラスは本物のボヘミアンガラスだそう。入ってすぐのガラスの板は実際に触れる。建物全体が螺旋状の構造になっていて、アーティストによる壁画や、立体作品を見ながらぐるぐると上っていく。

 

建物全部が小さな美術館のようになっていて、個人的にすごく好きなパビリオンだった……!アート好きにはおすすめ。なんかさらっとミュシャが手掛けたブロンズ像なども置いてありましたがそんなに主張してなかった。

 

マレーシア館

どこも並んでるな~と思いながらあてもなく歩いていたら、何やら音楽が聞こえてきて吸い寄せられるようにマレーシア館へ。屋外ステージでちょうどショーをやっていて、1階のレストランからはすごく食欲そそる香りが漂っていた。このときは待ちなしでするっと入れました。


前半はマレーシアの街並みや屋台など市民の暮らしの紹介、後半は各都市の紹介とスマートシティ構想についての解説がされていた。「スマート国家」を実現すべく力を入れていることが伝わってきて、IT化のスピードは日本よりも速いかもしれないな……。全然知らずに入ったけど内容が充実していて面白かった!

アイルランド

ちょうど入場時間近くに通りかかったので入ってみることに。スタッフさん手書きのボード、イラストがゆるくてかわいい。中に入るとアイルランドの自然や工芸品、日本との繋がりという点で文学者の小泉八雲、現代作家のクララ・クマガイの紹介がされていました。

 

コモンズD館

帰りの時間が迫っていてかなり急ぎ足で見た!独立したパビリオンを持たない国や地域がブース形式で出展しているんだけど、どこも特色があってすごく面白い。

見たのはタジキスタンモルドバパレスチナ、ナイジェリア、マーシャル諸島スーダン中央アジアタジキスタンは、鉱物や宝石が豊富に採れるらしく展示がとにかく石!石!民族衣装の刺繍も鮮やかで素敵だった。

 

モルドバでは伝統的な羊毛で作られたふわふわの帽子を触る。ワインの生産がさかん。あとは伝統的な食文化についてQRコードを読み込んで詳しい紹介が見れるようだったけど残念ながら時間がなく……!

パレスチナは民族衣装や伝統的な刺繍細工などを見る。マザーオブパールで作られた神殿のミニチュアが美しかった。ナイジェリアのパネルを見ていたら「エヨ祭」「オファラ祭」など土着信仰っぽい行事がすごく興味をひいた。

ラゴス特有のヨルバの祭り” という何ひとつわからない文章

 

マーシャル諸島。このスティックチャート(海図)を地図として航海していたらしいけどどこがどうなっているんだろう。マーシャルの歴史を読んで色々感じるところがあった。スーダンでは民族楽器がたくさん触れて楽しかった。

 

予定していた電車の時間ギリギリまで滞在して大急ぎで帰った!

 

2回目(6月末)

1回目は楽しかったけどさすがに時間なくて回り切れなかったな~どっかで2回目行きたいな~と考えていたところ、またまた関西に行く機会があったので、せっかくなら宿泊して次の日の朝から行ってみよう!となりました。

10時の入場予約で、9時20分に夢洲駅に到着して10時15分ごろに入れました。日曜日なのに加えて、5月よりも来場者が確実に増加していてめちゃくちゃ人が多い!並んでいるあいだ喉がとにかく渇いてたくさん水飲んでたけど、全然トイレに行きたくなる気配なくて怖かった……。

この日入ってまずしたことは、自販機でスポドリを買った!

 

前回である程度勝手がわかったので、それを踏まえて作戦を立てて挑みました。まず基本的にどこも思ったより並ぶので、並んでも入りたいパビリオンを決めておきそこは覚悟決めて並ぶ!そしてレストランの予約の要否や混雑具合を調べて候補を決めておく!

入りたいパビリオンをリストアップしたのはこんな感じ

・並んでも入りたい、必ずどれかは見る→ドイツ、ポーランドオーストリア

・気になる、行けそうなら行きたい→ルクセンブルクルーマニアハンガリーなどなど

 

完全予約なし参加だったけど、結果としてはこのうちのドイツ、ポーランドルクセンブルクルーマニアは入れたのでうまくいったんじゃないかと思う!

一応待ち時間にサイトを覗いてみると当日の予約枠もぽつぽつと出現していて、ただ出た瞬間即埋まるので私は早々に諦めました……。

 

ドイツ館

この日は入場したら最初にドイツ館に行くぞ…と頭の中でシミュレーションしていました。ちょうどそんなに並んでいないタイミングで、列もサクサク進んで入れました。

ドイツ館は建物も展示内容も、来場者に体験させる内容もすべてコンセプトが一貫していてすごかった……。メッセージがしっかり伝わってくる。そしてサーキュラーちゃんがかわいくて私はめろめろです。

 

入り口で1人1個渡されるサーキュラーちゃん(音声ガイド)をセンサーに押し当てると、かわいく明瞭な声で、存外しっかりした口ぶりでドイツの環境への取り組みを解説してくれます。ていうかこのゆるい見た目でめちゃくちゃ喋る、予想の10倍は長く喋る、それもひたすら環境や循環型経済に関する内容を……。

内容はちょっと高度だけどそんな取り組みをしてるのか、そういう考え方があるのか!とたくさん知れて面白い。印象に残ったのは「循環のループを閉じる」というフレーズ。ループが閉じていないと資源が失われていく一方だけど、ちゃんとループを閉じることで持続可能な社会を実現できる。

 

老若男女みんなこの小さきものを耳に当てている光景にほっこりする。サーキュラーちゃんは解説だけじゃなくて「なでて~」とか「手のひらでやすませて」とか言ってくるからもうわたしは……。愛おしさに途中から手のひらに寝かせるスタイルで移動してました。環境が好きすぎるあまり急に緑色に発光しだす、ちょっぴりクレイジーな一面をもつ。

 

歩いて疲れたところで寝転がって休憩できる映像ゾーンが設けられているのもよく考えられてて感心してしまった。大人になるとさ……展示やアトラクションそれ自体への感動と同時に人の心を動かすよう計算された設計……これを作った人の発想力……って部分に思いをはせてしまうよね……。

ゆっくり回転する円の中でソファに身を投げ出してスクリーンを眺めていると、わたし自身も「わ」の中にいるんだなと感じた。

 

見終わるころには手渡されたサーキュラーちゃんに愛着がわいててお別れしたくない~!って気持ちになるけど、この子をお返ししてパビリオンの中で循環させるところまで含めて展示なのだ。

音声ガイドスポットの8~9割聞いたと思うけどそれで1時間くらい滞在してたので、いようと思えばもっといられてしまうドイツ館。行くならまだあまり疲れてなくて頭が働いてる午前中がおすすめです。

 

ちょうどお昼時になっていたので、事前に調べていたマーケットプレイス東のドイツ料理の売店へ。カリーブルストバーガー、ボリュームたっぷりで美味しくおなかいっぱいになった。ポテトが相当量あったけど、しょっぱくてカリカリのポテトが汗をかきまくった体に効く……!

 

コモンズA館

行ってはみたけど人が多すぎて身動きがとれない状態。各国ブースの展示はほぼ見れず早々に退散しました。アフリカの国・ブルンジの物販でアイスコーヒーをテイクアウトした。苦みがありすっきりしていて美味しいコーヒーだった!でもとにかく暑くて一瞬で飲んでしまったよね!(気温35℃超え)

イエメンの物販ではアクセサリーの値切りが絶賛繰り広げられててツイッターでみたやつだ!になった

 

アラブ首長国連邦

スタッフさんの「並ばずに入れますよ~」の呼び込みに誘われて。中はとても涼しくてHPが回復した。建物自体を凝った構造にするのではなく、ナツメヤシで作った柱がどーん!とそびえたっている潔くも大胆な予算の使い方。

UAE建国の父という方がナツメヤシの栽培を推奨したそうですよ。展示内容はアラブの伝統文化やナツメヤシのこと、UAEで活躍する研究者の紹介など。来客へのおもてなしとして焚くというお香を嗅いだ。

 

ポーランド

13時~14時台の炎天下で40分くらい並んだ。日差しを遮るものがなくとにかく暑かった……。

植物と音楽と詩。パビリオン全体が詩情がある……。小部屋のインスタレーションと、マズルカポロネーズのリズムの展示が面白かった。ポーランドといえばショパン、みなさんご存じですよねという感じ(?)なのか特にショパンに関する説明はなかった。
館内のあちこちに詩が紹介されていて、出口でたくさんの詩のカードの中から一枚選んで持って帰れるのも嬉しい。満足度高かった!

 

サントリーのコーヒーフロートでちょっと休憩



ルクセンブルク

ちょいちょいチェックしていたけど入場規制中で、3度目の正直で入れた!45分待ったけど並ぶ場所が日陰になっていて涼しく快適だった。このブログ暑さの話ばっかりしてる。スタイリッシュな外観だけど近づいてみるとパネルとテープを組み合わせた分解しやすい構造で、環境への取り組みを表したデザイン。

The Luxembourg heartbeat. 「ドキドキ」をキーワードに、さまざまなルーツの人々が共存するルクセンブルク社会の多様性と先進性をアピールしていた。やっていることはシンプルなんだけど、コンセプトを体験・体感させるアイデアと技術がすごかった。体験の要素が大きいから文章では伝わりきらないけど、とてもいい展示内容だった。

 

前回行けなかった西ゾーンを見てみようと思い、日差しも落ち着いたので大屋根リングの上を歩いてみた。17時過ぎたあたりから各所でイベントをやっていて、リングの上からオーストラリア館のブラスバンドコンサートや、スペイン館のフラメンコショーをしばらく見たりした。パビリオンに入らなくてもこうやって気軽に楽しめるのはいいな。

 

この後1回目で訪れたコモンズD館を再訪し、ブースをちょっと見てからスーダンの物販でタングドラムを買った。前回行った時から欲しいな~~と思っていたんだ……Amazonとかで普通に買えるんだけどそれはそれ。

 

ルーマニア

この時点で18時半くらい。もうそんなに回る体力はないし、並んで見終わったら帰るのにちょうどいい時間かな~ということでここを最終地点に。そういえば万博1回目からの変化として圧倒的日傘率っていうのと、持ち運べる椅子を使っている人が断然増えてた。

メインは生演奏のクラシックコンサート。この日はバイオリン×2とピアノ×1の三重奏。演奏されていた曲の詳細は分からないんだけどすごく美しい旋律、美しい音色だった……。というのもあれなので今調べたところ、1曲はエネスクのルーマニア狂詩曲第1番でした。

コンサートが終わった後は各々自由に見る形式で、工芸品や人工心臓の模型が展示されていた。卵殻で作られた着物が神秘的で美しかった。

20時頃に帰りました。夜のミャクミャクは完全にホラーなんよ。

この日も結局ご飯はそんなに食べれなかったな!しかし1回目でやり残したこともやれて、丸一日しっかり楽しんだ!という感じがします。

2回の訪問の中で個人的に好きだったのはチェコポーランドルーマニアなどの芸術特化系パビリオン。すごく面白くて体験できてよかったー!と思うのはドイツ、ルクセンブルクかな。

 

各国の文化や技術を知れるっていう良さもあるけど、その国が「今アピールしたいこと」だから必ずしも実情と一致してはいないんだろうなぐらいに考えている。けどそれも込みで、今この場で何を発信したいのか、何に力を入れているのかというのが伝わってきてとても面白かったです。いろんな国の人がこんな風に一か所に集結することってないしね。貴重な体験でした。

 

映画ベルサイユのばら

映画ベルばら、とても良かったです……。

1回観れたらいいかなと思っていたけど2回目も行きました。

オスカルの生き方や人物像、人々が求めた自由のこと、オスカルとアンドレの関係、感じたいろんなことをとにかく文章にまとめて吐き出したい……!!と思ったものの、実際に手を付けると書き方がわからなくなってとても苦しみながら書いてる(感想ブログ書くときほぼ毎回そう)

前提として、私のベルばら知識は原作未読でざっくりとしたあらすじと主要な登場人物は頭に入ってるくらい。宝塚版はフェルゼンとマリー・アントワネット編(14年花組)フェルゼン編(24年雪組)をさらっと。そもそもオスカル編を観ていないのでベルサイユのばら自体初見に近いくらいの感想です。

 

***

 

「なぜなら心は自由だからだ!」

この力強い言葉を聞いた瞬間わっと身体中に血が巡るようで、私自身は身分制度に苦しんだ経験もなにもないのに、ものすごく心を揺さぶられた。忘れかけていたけどそうだった、という気持ちが近いかもしれない。さらにオスカルはこの言葉を訂正する。「自由であるべきは心のみにあらず!人間はその指先1本髪の毛1本にいたるまで、すべて神の下に平等で自由であるべきなのだ」

 

人権宣言について、歴史としては知っていたけど初めてこんなに自分ごととして考えたかもしれない。自由という概念の登場は、今は想像もできないけど当時の人々にとってものすごくインパクトがあって、それ自体が革命だったんだと思う。オスカルがルソーの社会契約論に出会って自分から思想を学ぶというシーンが明確に描かれていたのも良かった。

実際には人権宣言が対象にしていた「人」とは白人の男性であって、女性は含まれていなかったし、女性の衛兵隊長は史実にはいなかった。フランス革命によって始まった共和制は数年で終焉を迎え(エンドロールでここまで触れていた)、王政復古の時代が始まり、そして再び革命が起きる。そうやって進んだり後退したり、何度も血を流し同じことを繰り返しながらそれでも少しずつ進んでいって、その先に今があるはずなんだ。

 

 

まだ10代の頃のオスカルが、マリーの護衛を命じられたときの、りりしく誇らしげな表情がかわいくて印象に残ってる。オスカルは父に言われるまま男の役割をひたすら生きてきた。いわゆる「女性としての幸せ」を捨てたような形で、しかしそれは同時に男社会で力を発揮し認められるという自己実現でもあった。そこに今度は結婚して家庭に入り後継ぎを産めと突然言われる。マジでこの父親……。(結局のところオスカルを戦乱の危機から遠ざけるのが父の真意だったんだけど、だとしてもよ)ジェローデルは彼なりにオスカルを真剣に愛していたんだと思うが、信頼をおき長年対等にやってきたと思っていた相手から、最初から女性としてしか見れなかったとか守られるべきかよわい女性扱いされるのはなかなかキツい……。

 

女性でありながら男性としての役割を課され、かといって完全に男性として生きられるわけでもなく、女性であるがゆえのしがらみはずっとついて回る。自分の人生は一体なんだったのかと悩み、オスカルが出した結論は、自分の意思で軍人として生き、フランスのために身を捧げるという選択だった。「これよりは軍神マルスの子として生きましょう」その強さと覚悟に震える。自分の意思とは関係なくそうあるように育てられ生きてきたのを、自分の意思で選んだ生き方に変えてしまうのが本当に格好いい。

 

そしてその通りに最後まで生きた。

革命の戦闘描写のスケール感とリアリティがさすが……という感じだったんですが、オスカルの率いる衛兵隊がひときわ統率がとれていることが視覚的にもよく伝わってきたし、オスカルが指示を出しその通りに隊員が動き進軍していく様子を時間をかけて見せていて、オスカルが優秀な指揮官であり、バスティーユ陥落に大きな役割を果たしたことが描かれていて嬉しかった。舞台ではそのへんが難しくてどうしてもフワッとなるので……。戦いの中で、敵味方どちらの軍勢も一人、また一人と倒れていき、命を奪っているということを容赦なく突きつけてくる。

愛した人を失った深い悲しみのなかでもオスカルは自分を見失うことなく前へ進み、命が尽きる直前まで指揮をとり続けた。よく晴れた空の下で、市民は勝利に沸いていて、誰も一人の軍人の死に気づかない。その歓声の中で、衛兵隊の部下たちがひっそりと「名もなき英雄」となったひとの死を悼んでいる。

 

「私はバラのさだめに生まれた」「バラは気高く咲いて美しく散る」とはTV版のあまりに有名な主題歌で、特別な運命を受けて短い生涯を終える悲劇的な美しさ、高貴な儚さに惹かれるのは間違いないけど、この映画を見て私の中に残ったのは自分の人生をたくましく生き、最後までやり遂げたその強さと美しさだった。そして「草むらに名も知れず咲いている花」にだってそれぞれの人生があり、激動の時代を誰もが懸命に生きていたんだと感じた。

平民だけでなく、貴族も王族も縛られているけれど本当は自由を求めている、というのもこの映画のテーマになっていたと思う。マリーもオスカルもフェルゼンもアンドレも、権利を求めて立ち上がった市民たちも、上官の命令に従い市民に銃を向ける兵士たちも。自由とは、自分らしく生きるとは、という主題が作品全体を貫いているのがよかった。

 

話はそれるけど「心は自由」のくだりでもう一個とても印象に残っているのが「なぜそれがわからんのかーーー!!」とオスカルが激昂し男泣きするところ。部下と分かりあえないことへの苛立ちと、それ以上に自分のふがいなさへの怒りなのか、にしてもあんまりにも熱血で……。見た目通りのアンニュイな麗人ではない、熱くて激情家でまっすぐなオスカル、めちゃくちゃ魅力的な人だ。

 

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「この人は生まれながらの女王なのだ」

恋を知らない無邪気な少女だったマリーが、女性として、王妃としてみるみるうちに成熟し開花していく、その鮮やかさと存在感に何度も目を奪われた。平野綾マリー・アントワネット、素晴らしかったですね……この声でなければ物語の奥行きがまったく違っていたと思う。マリーは数年のうちにどんどん大人の女性になっていくのに、オスカルは大きく変わらないままという対比もよかった。

好きな人にはなんでもしてあげたい、がマリーの行動原理で、オスカルのことも愛しているからなんでも与えてやりたいし安全な場所に、できれば自分のそばにいてほしい。でもオスカルが望んでいるのはそうではないんですよね……。結局そこがわかりあえないまま別れてしまう。あなたのことを守りたいのに、どうしてわかってくれないのだろう、と互いに思っている。

「近衛隊にお戻りなさい」という一声にあふれる威厳。オスカルの進言を聞き入れず、「王権は神が与えたもの。国王陛下の栄光なくしてはフランスの発展はありえない」とごく当然のように言い放つマリーは愚かなのではなく、ただ古きよき時代そのままの誇り高い王妃だった。

 

その後のマリーのエピソードは映画中では描かれず、フランス革命の経過と、マリー・アントワネットが処刑されたという歴史上の事実のみが伝えられる。エンドロールで流れる、すべてを受け止め包み込むような主題歌がまた素敵で、この映画の終わり方としてはこれ以外ない、これが正しいなと思う。ただやっぱりマリーの最期まで観てみたかった気持ちもあります……平野綾マリーがほんとに素晴らしかったので……。

 

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「連れていけ、地獄の果てまで。おまえと離れては生きていけない。おれはおまえの影だ」

アンドレという男のことを私は何も知らなかったんだ……。

 

youtu.be

光と影、はよく言うけどこういう影もあるんだな。オスカルがいる限りオスカルの一番近くにアンドレがいて、アンドレがいるからオスカルは自分の存在を確かめられる。

挿入歌「Believe In My Way」のそれぞれの心象風景が、マリーは海の底、オスカルはいばらの中、フェルゼンは海辺。アンドレは溶岩が流れる大地の上に立っていて、ひび割れた地面の隙間からマグマが見える、その狂おしいほどの思いを内に押し込めているイメージがアンドレだったなと思う。最初は爽やか大親友ボイスだったのにどんどん激重になっちまって……

 

思い詰めた末の毒ワイン事件(未遂)、いくらなんでもそれはお前ーーー!なんだけど、ただでさえ長年の思いがふくれあがっているところにいろんな方面から追い討ちをかけられて相当参っていたんでしょうね……。オスカルにゆるされて嗚咽するアンドレ、今まで本当に辛くて苦しかったんだな……。豊永さんのこういう演技好き。オスカルの方もアンドレとの関係を見つめなおすことになるけど、あんなことがあったというのにアンドレから離れるって考えは浮かばなかったんだから、すでにある意味答えは出ている。

 

「私が結婚すると彼は生きていけないほど不幸せになってしまう」「彼が不幸せになるなら、私も世界一不幸な人間になる」彼を愛しているのかはわからない、と言うけど、そこまで思えてしまうのはもう、どんな種類であるにせよ、間違いなく……。というところに「私もまた貴女が不幸になるなら世界で最も不幸な人間になってしまうから」と言って身を引くジェローデルが何枚も上手。

この辺りになるとオスカルも自分の気持ちにうすうす気付いているんだろうな~~。そしてアンドレもそれを感じつつ、お互いそれ以上踏み込まないでいる……みたいな、ワンシーンだけ描かれている微妙な空気感がとてもいい。

 

そしてあの夜。硬い表情や声からオスカルの緊張がすごく伝わってきて、自分から切り出すのはすごく勇気がいるしこわいことだったよね、と胸がギュッとなる。アンドレがひざまずいて「すべてをくれると……」で今宵一夜の正解だ~~~となったり(?)咄嗟に逃げようとするのを抱きしめてからの「待たない」「おれは待った。じゅうぶんすぎるほど待った」「もう待てない」からの「こわくないから……」さすがにオーバーキルすぎて観てるこっちが照れる。数秒前まで「すべてをくれると……?本当に?」みたいな感じだったのにこの男。髪に触れたり唇をなぞったり、全部いとおしそうにするのが素敵で、と同時にすでに視力を失いかけているから手で触れることで確かめていたんだよね……。

 

馬に乗って駆ける後ろ姿が、もうはっきりとは見えなくても記憶の中で光り輝いていて、いつも前をゆくオスカルを見ていたこの景色がアンドレの宝物だったんだなあと思った。致命傷を負ったアンドレが、手当てしようとするオスカルに「隊長がなぜ現場を離れる」と息も絶え絶えに言うところがめちゃくちゃ好きで。オスカルが自分の信念を果たすことがアンドレにとって何より大事なことだから。あと、こんな状況なのに「(目が見えないのは)いつからだ!なぜついてきた!このばかやろう!!」って掴みかかるオスカルも好きなんだよね……好きだしつらい……。

 

オスカルはアンドレの血で染まった軍服を纏って戦場に向かう。朝、軍服に袖を通した瞬間にだって、それ以外のふとした瞬間にも何度も何度もアンドレがもういないことを感じただろうに、本当に何気なく、いつもそうしていたように呼びかけてしまう。言葉が出ない。別れを受け入れるには存在があまりにも大きすぎる。

でもアンドレは最後までずっとオスカルのそばに寄り添っていたんだと思う。私にはそう見えた。吹き抜ける風とか、風に舞う葉とか、空を飛ぶ鳥とか、そういうものとして。だからオスカルは最後のその瞬間まで一人じゃなかった。「あの春のたまゆらにおまえがいた」「カストルポルックスのように」。幼い頃から魂を寄せ合って生きてきた二人の姿がいつまでも心に残った。

 

 

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その他雑感

・今宵一夜の正解とは→宝塚版ではオスカルがアンドレの足元に跪くんだよね。なぜなのか……アンドレが愛を乞うのがいいんじゃん〜〜

・本文中にら全然触れられなかったけどフェルゼンもいいよね……あのスマートさと分け隔てないあたたかさというか、理屈ではなく惹かれてしまうのがわかる。やっぱり顔がものすごく綺麗だし声も素敵だし……。だが生涯を共にするなら陛下一択、フェルゼンは永遠の初恋の人タイプの男……

・アランが草くわえてるの好き

・オスカルの転属を知ったジャルジェ将軍。(アンドレに向かって)「あの馬鹿が自信過剰の鼻っ柱をへし折られて逃げ帰ってくるまで護衛しろ!」こうと決めたらテコでも曲げないことをなんやかんや理解していていつも手を焼いてる感。でそんな娘さんは間違いなくあなた似です。

・ベルナールのミュージカル革命ソング、歌詞とメロディーと歌声のハマり方はこの曲が一番だと思う……。武器を取れシトワイヤン!リプライズの使い方に鳥肌が立った。

 

 

 

2024年振り返り

年が変わってからこれを書いてる。趣味も生活面でもかなり大きな変化があった1年でした。

大体観劇とときどき美術展の感想です。

 

花組 アルカンシェル

2月上旬から5月末まで観劇していて上半期はほぼこれに尽きる。もう随分前のことのような気がするし、細かいことを思い出そうとしてもあんまり記憶がない……当時とにかくいっぱいいっぱいで、これで自分の世界が一回終わるくらいの気持ちだったし実際そうだったんだと思う。

脚本についてはいくつか思うところがあるけど、マルセルが理想のヒーローではなく、繊細に揺れ動きながらも困難に立ち向かう姿が好きで、何よりとても美しかった。フィナーレのデュエットダンスとその後のソロダンスを毎回大切にかみしめた。

サヨナラショーはライビュで観たけど、全く文句のつけようがない素晴らしいプログラムで、中でも群舞の緊張感と鳥肌がたつような神聖さ、黒燕尾の肩に降ってくる汗の雫の美しさ(観た人にしか伝わんないと思うけど、細かな水滴が燕尾服の表面にとどまって、宝石が散りばめられているみたいにきらきらと輝いていた。燕尾服の素材が水を弾くのは初めて知った)あの光景はずっと覚えていたい……。ラストはみんなでワイワイと明るく、笑顔で幕が降りるところがすごく愛おしかった。

 

 

最後に観劇した日、日本橋三越ポーの一族のパネル展示をやっていたので見てきた。ポーの一族っていうかエドガーとアラン展かも。

 

ウィーン少年合唱団

当初2020年に行こうとしていたのが来日中止になり、23年はスケジュール的に行けず……でようやく!綺麗な歌声に癒されました。

想像していたよりもアットホームな感じのコンサートで、ピシッと統一されているというよりはみんな自然体でリラックスした雰囲気だったのがよかった。「天使の歌声」とよく言うけど、個人的には彼らの歌声は穏やかな森とか野の花みたいな、優しい自然のようなイメージ。今回限りじゃなくてまた聴きにいきたいなあ……

 

雪組 ベルサイユのばら

一度は観てみたいと思うよね、ベルばら……。話は超ダイジェスト版という感じで、あらすじを脳内補完しつつ脚本の展開に突っ込みを入れつつで観るんだけど、有名な名場面や楽曲、豪華絢爛な衣装でザ・宝塚のベルばらを体験できたのが嬉しかった。

今回のバージョンはフェルゼンが主人公で、フェルゼン自身が物語を動かすというより彼の目を通してマリー・アントワネットの運命を見る形になるのが面白かった。未熟だったマリーが自覚と誇りを備えて成長していく過程、そうして迎えた最期の凛とした美しさ。断頭台までの階段を上っていく後ろ姿の気高さにだばだばに泣いてしまった。夢白あやちゃんの芝居が好きです。それを見届ける彩風さんフェルゼンの、悲しみだけではない、絶望や怒り、さまざまなものが入り混じった強い視線、血の滲むような「愛、それは…」の歌唱がすごくよかった。

フェルゼンは理想の恋人であって、伴侶にはなれないというのが私の印象……(原作未読なので的外れだったらすいません) 王妃様をお救いせねば!と東奔西走する男たちに対して、「フランスの王妃として全うしていただこうではありませんか」と必死に訴えるロザリーの対比がいい。貴族の男たちよりもよほど王妃の誇りのなんたるかを理解している。立場は違えどマリーもオスカルもロザリーもそれぞれの場所で戦っているんだなと強く感じた。

2回観劇したんだけど、図らずもそれぞれフランス革命の日とパリ五輪の初日だったのはちょっと運命的だった。

 

花組 ドン・ジュアン

改めて見るとポスター良~~!稀代の色男がいてメチャクチャ遊んでたんだけど運命の女性と出会って……まあ話の筋としてはシンプルなんだけど、とにかく濃い、密度の高いヘビーな作品で、一回の観劇では消化しきれなかった感もある。舞台上で渦巻くエネルギーが重くて濃ゆくて、演出も凝ってて凄かった。

赤い薔薇が表すものは血であり炎であり、時には愛でもあるのかな。マリアと出会って生まれ変わったようになっていたドン・ジュアンが、決闘騒ぎですぐ元のギラついた目に戻るのがよかった。人はそう簡単には変われないし愛は万能じゃない。野心と欲望の本能も、愛する人のために善く生きようとする心も、どちらも本当のドン・ジュアンなんだと思う。そして彼を取り巻く女たちもまた、彼を求めながらも見下していて、一方で愛していたのかな……

あとドン・カルロにかなり萌えてしまったんですよね……。絶対ただの友情以上のものがあるでしょう、具体的にどういう台詞か忘れたけどそう匂わせるような台詞とか振付の絡みとか……ドン・ジュアンはお節介な奴くらいにしか思ってなさそうだけど……。エルヴィラのことを見放せないのも、彼女の中に自分の姿を見ているんじゃないかなと思った。背が高いのもいいし、ベタだけど咄嗟に剣を抜いて助けに入るところとかさ、いいよね……。

 

TABLEAU・劇団四季 ゴースト&レディ

本当〜〜〜によかった。感想はこちら↓

matiya-a.hatenablog.com

もっと超個人的な感想というか感情としては、トップスターという男役のピラミッドの頂点を経験していながら、柚香さんが表現したのは何にもびくともせず堂々としている強さというよりも、必死にもがきながら「自分」を生きようとする強さのように見えて、驚きと共感のような、うれしさのような……同じ苦しさを知ってくれているという感覚。やっぱり好きだなあと思った。

 

花組 エンジェリックライ/Jubilee

「エンジェリックライ」ストーリーは深く考えるよりもコメディ調でわちゃわちゃとした感じなんだけど、「人を信じること」を主題にハートフルなハッピーエンドで、その優しさがこの作品の好きなところ。天使たちがかわいい。東京でもう1回観る!

「Jubilee」久しぶりのショー作品が沁みる……。内容は普通に良いっていうとあれだけどオーソドックスで良い。戴冠式の場面はちょっと腑に落ちないというか、犠牲があったと言われてどういう気持ちで見たらいいんだろうと思ってしまって、そこだけ……。

 

しかしフィナーレまでずっと楽しく見ていたのに、パレードで突然ぶわっときて自分で自分にびっくりした。大きな羽根を背負って大階段を下りてくる柚香さんを思い出さずにはいられなかった。デュエットダンス後に必ずエトワールに向けて「どうぞ」と手を差し出してから捌けるのを、毎回目で追っていたから、いつものように目を向けて、もうあの姿を観れないんだと実感してぼろぼろ泣いてしまった。今はもう大丈夫だけど、ちゃんと見れるようになるまで結構かかって、理性と感情は違うんだな〜〜〜という話でした……。

 

RUNWAY

つい最近までやってたやつ。宝塚OG公演、それも100周年当時のトップスターが大集合ということで、豪華なのは間違いないけどリアルタイムで知らない方々が中心だからどうなんだろう…と思っていたら予想外に大満足!懐かしい曲の再演だけじゃなくて、全体を通してショーとしてしっかり見応えがあるものになっていたのがすごく良かった。ダンスシーンがたくさんあったのも嬉しかった……生で拝見する蘭寿とむさんはあまりにも格好よかった。

 

カラオケ行こ!(映画)

よかった……。

matiya-a.hatenablog.com

 

印象派 モネからアメリカへ(東京都美術館

これ2024年だったかな!?カメラロールを見る限りそうらしい。本当に5月あたりで一回記憶を失ってる気がしてきた。

ウスター美術館の収蔵作品(モネやルノワールも)からアメリカの印象派へ、という見せ方がよかった。日光のやわらかさや明るい色彩が素敵だな〜とシンプルに感じた。記憶に残ってるのは3人の画家を目隠ししたままグランドキャニオンまで連れてきて絵を描かせたとか……最初に見たときのインパクトのまま描いてほしくてわざわざ目隠ししたらしい、すごい話……!

 

女性画家たちの大阪(大阪中之島美術館)

2023年の「大阪の日本画」展がすごく好きだったので、絶対これは見たい!と思っていた。大正〜昭和に大阪で活動していた女性画家という縛りで、これだけのボリュームの展示ができるというのがまずすごい。

島成園の《無題》、痣のある自画像。「大阪の日本画」でも見た三露千鈴《殉教者の娘》はやっぱり清らかで神聖なオーラに引き込まれる。橋本花乃も好きな作品がいくつかあった。「女四人の会」や画塾の集合写真も展示されてて、こういう女性のコミュニティの存在、女性同士の連帯がまたいいなあと思った。この記事を書きながら振り返っていると「女性」というテーマについてよく考える1年だったかもしれない。

 

マティス 自由なフォルム(国立新美術館

東京公演が当日中止になった回がありまして……同様の事態は前にもあって、そういうときはせめて何かを得てから帰ろうと良さげな美術展を探すことになる。

ただそれはそれで最初から狙って行くのとは違う新しい出会いがあって、マティスの作品を見るのは初めてだったしフォーヴィスムも切り絵もあまり見ないジャンルだから面白かった。ポスターデザインにもなっている青のヌードは、実物を見ると紙の重なりの濃淡とか、紙の形の組み合わせで立体感を表現しているのがよく分かって考え抜かれているんだなと思った。修道服や礼拝堂のデザインが素敵だった。

 

 

私生活では生活環境が大きく変わり、諸事情により短期間で2度の引っ越しを経験することに……さすがにもう当分ないはず!あと突然レッサーパンダの推しができました。凛々しい顔つきの女の子なんです、本当に可愛い。

 

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2020年から観劇を始めて、これまでの5年間で観た作品を総まとめ!

私が観た中で2024年ベストのミュージカル作品はダントツでゴースト&レディ、ショー・コンサート部門でTABLEAUでした。2023年は二人だけの戦場、次点でBONNIE&CLYDE。この年は全体的に好きな舞台が多くて、その中でも作品として特に良かったのはこの2作だったかなと思う。2022年は巡礼の年が刺さって、今も心の中の大切な場所にある作品です。

 

今年からは宝塚も落ち着いて観劇傾向も変わりそうだけど……2025年も自分なりのペースで観たい作品を観れたらいいな!

女性を生きるということ TABLEAU / ゴースト&レディ

半年以上ブログ書いてなかった……

柚香光さんの退団後初の舞台を観た(9月の話)そして劇団四季ゴースト&レディの話をします。2作を立て続けに観劇したけどどちらも素晴らしく、図らずも共通のテーマがあるように感じた。ものすごく心を動かされたので、ちゃんと文章にして残しておきたいということで……もう結構経ってしまっているけど思い出しながら書いていきます。

 

 

 

TABLEAU(シアタードラマシティ、御園座、千秋楽ライビュ)

TABLEAU。フランス語で「絵画」「動く絵」を意味する言葉で、ひと場面ひと場面が絵画のように記憶に残るように、というニュアンスのタイトルだそう。聞いた瞬間にものすごくぴったりだと思ったし、タブローという言葉は原田マハさんの小説で知っていて、それもそもそも美術館が好きという点で読んだので思い入れがあり……!

 

宝塚という枠から飛び出してどんなものを見せてくれるのか。退団の喪失感は予想以上にものすごかったけど、その一方で「宝塚」に収まりきらないところのある人だと前から思っていたので、新しい世界に飛び出して何にも縛られない表現を見せてくれる日がくることをずっと楽しみにしていた。

1回目はSNS断ちして極力まっさらな状態で観たんだけど、直後は脳の処理が追い付かなかった。あまりにも強烈で……素晴らしいものを見たということはすぐに理解した。2回目3回目と重ねていくとますますいろんなことが伝わってきて凄かった……!

 

開演前のやつー!テロップで日付が出るのが記念になってうれしい

 

コンサートの構成としては前半パートでは男役らしい格好よさを押し出して、宝塚時代の曲も振り返りつつ、後半パートで女性としてのパフォーマンスを見せるような形だったけど、男役も女性もどちらも違和感なくすごく良かった。女性らしい方向に変えるということじゃなくて、境界線を自由に行き来しているようなところが彼女らしくて素敵だった。

場面ごとに全く違う表情が見られて、どこを切り取っても芸術的で素晴らしかったけど、特に後半パートの女性の姿での歌と踊りに心が揺さぶられた。その曲、その踊りに込められた人々の思いを、なりふり構わず全身で訴えかけてくる表現力がすごく好きでした。

 

フラメンコ

スペインのへレスに滞在して、現地の方のギターに合わせてその場で振りをつけていったというフラメンコ。幕が上がると赤いドレスの柚香さんが立っていて、後ろにカンテ(歌い手)とパルメーロ(手拍子奏者)がいる。(用語は今調べた)曲が始まる瞬間に舞台上に赤い布がバッと降ろされるのが鮮やかでまさに絵画のようだった。

前にも「DANCE OLYMPIA」という公演で男性のフラメンコを踊っていて、私は生観劇は叶わなかったのでいつか生で観れたらな~と願っていたので……念願叶って……!それも今回はまた全然違う女性としての踊りで。凄すぎるものを見ると人間って固まるんですね。多分劇場中の人みんなそうだったと思う。

ドレスを激しく翻して、地面を踏み鳴らして、怒りなのか哀しみなのか、激情がそのまま踊りになっているような……。全身から発せられるエネルギーのすさまじさ。ピンと張りつめた緊張感から始まり、徐々に熱量が上がっていって、カンテもパルマも一体になってどんどん激しくなっていくのが本当に凄かった。

 

後のトークでフラメンコの歴史について、虐げられてきたロマの人々が抵抗するため、苦難に立ち向かうために地面を踏み鳴らし声をあげて歌い踊ったというところから始まったこと、そうした背景に敬意を込めて踊りたいと語っていたのもすごく印象的でした。パフォーマンスからもトークからも並々ならぬ思いが伝わってきて、いちファンとしてはぜひ今回限りではなくこれからもフラメンコを続けてくれたら嬉しいな……。

 

その次に福山雅治の「聖域」を歌うという……選曲の予想外さ(「攻めとか受けとか決めるのわたしだから」のあの曲)とフラメンコの直後でなんでそんなすぐ歌える!?という両方にびびった。

これもすごく良くて、特に千秋楽はその前のフラメンコが限界を超えたくらいに激しくて、まだ少し息が上がっていたように感じたんだけど、そこに必死に食らいついて歌っていたのがかえってよかった。ギラギラとした目で「触るな」と叩きつけるのが、挑発的でもあり強い拒絶のようにも感じてぞくっとした。

(まじめに書いたけど、それとは別にめちゃめちゃ強気な女なの最高好き……とはしゃいじゃう部分はあります)

しかし話題になってた曲、と認識していたのを改めてしっかりと聴いたら、福山雅治はすごいなとしみじみ思った。「お金のことは何一つ考えなくていいように死ぬほど欲しいの」「それでいつかお金から解放されるなら」……すごくない!?

 

 

 

女性の尊厳

レ・ミゼラブルから「夢やぶれて」のソロ歌唱。歌う前にこの曲に込めた思いを語っていたけど、その中で出てきた「尊厳」というワードがとても印象に残っている。

「ファンティーヌが人として、母親として尊厳を奪われて、どん底のような状況で歌いはじめる曲」「それなのに、この曲には人間の尊厳を表すかのような美しいメロディーが流れている」「そんな状況でも、彼女は ”それでも人間は美しい”と信じていたんじゃないか」そう解釈する柚香さんこそ人間の美しさを信じているんだと思うよ。

歌い始めの緊張感からも本当に特別な思いがあるんだなと伝わってきたし、数あるミュージカルの、さまざまな人物や名曲がある中で、この曲を選ぶのか、この人物に惹かれるのか……と今まで知らなかった素顔を見た気がした。

 

その歌唱が今までに聴いた柚香さんの歌の中で一番すごかった、と思うくらい、本当に感動して……。真っ赤なドレスに短い金髪と痩せた体の、柚香さんのファンティーヌ。想像を絶するほどの貧困と搾取の中で、娘だけを思い懸命に生きようとした人。どれだけ虐げられて絶望しても、決して奪えないものがあるということを体現していた。あの魂の叫びのような歌声と、体を折って全身の力を振り絞って歌う姿、激しい慟哭の後に静かに押し寄せてくる哀しみ、今もずっと覚えてるし忘れたくない。

 

(実はミュージカルのレミゼはまだちゃんと観ていなくて、マンガで読む名作文学みたいなのを昔読んだので話は知ってる。髪を売るといえば私の中では若草物語のジョーが真っ先に出てくる。当時の価値観では髪を切ることがものすごく痛みを伴う行為だったんだな……そして女性が1人で生きていくのがあまりにも困難な社会だった)

 

 

突然にやってくるレディー・ガガ「Born This Way」。キラキラな衣装にハイヒールとサングラスという大変ゴージャスなお姿で、初見時は「レディーガガだ!!?」の衝撃でいろいろ吹っ飛んだのですが……!

有名な代表曲でもちろん知っていたけど、改めて歌詞を読んでちゃんと聴くとレディー・ガガってすごいなあ……という気持ちに包まれる。こんなに真っ直ぐにメッセージを伝える、堂々と宣言することができるのかと……。ただポジティブさを歌っているのではなく、性別や人種や性的志向にかかわらず世界中のあらゆる人が抑圧されることなく生きる”権利がある”と、強く訴えかける曲なんだよね。その権利のために戦う人を鼓舞するというニュアンスも含んでいる。

この曲を歌い踊っているとき甘さは一切なく、笑わずに鋭い表情でダンスもキレッキレでカッコよくて、たしかに戦士のようだった。

 

一転して、Siaの「Chandelier」でのダンス。この曲は一時期よく聴いていたので個人的にすごく思い出深くて……(Aliveとセットで聴いていた) それからMVのダンスが凄いんだよね。まさかこの曲を踊ってくれるなんて……!今もあのダンスと、シンガーの直さんと開さんの歌声を思い出せる。

もがき苦しむ人の姿を、人の痛みというものをどうしてこんなに鮮明に表現できるんだろうと思う。普通、この角度は盛れないから嫌だとか、自分のこういう部分は知られたくないとか、少しでもよく見せたいって誰にだってあるじゃないですか。でも柚香さんからはそういう見栄や保身みたいなものを全く感じない。(私が勝手に言ってるだけで、彼女には彼女なりにいろいろあって当然だと思いますが……)  舞台上で魂まで全部晒け出して、時には見てもいいのかためらうような部分もあるんだけど、それすらも目が離せなくて美しい。

 

これまで柚香光さんの男役を見てきた中で心をぐわっと掴まれる瞬間がたくさんあって、特に苦悩する役を演じているときの容赦ないリアルさと、繊細な心情表現がとても好きだった。男性でも女性でも作品に向き合う真摯さは変わらないけど、女性だけの苦しみや絶望、怒り、悲しみ、その中でもがく強さというのは確実にあると思う。それは男役のときにはできなかったことで、柚香さんはずっと前からそれを表現したかったのかもしれない。

少なくとも本人希望のチョイスだと明言されているのはフラメンコ、夢やぶれて、Chandelierと残響散歌(これもめちゃくちゃ意外な選曲だったな……!白のパンツドレスで歌っている姿がとても神々しかった) ずっとやりたかったことを詰め込んだと思われるこの挑戦的な選曲に、気高さに、やっぱりすごい人だと思う。

おそらく演出の小林香さんの選曲だと思われる、聖域、Born This Way、そして前半パートで男役でやっていたFeeling Goodも。いずれも柚香さん自身へのエールであると同時に、客席にいる私たちに一貫した強いメッセージを伝えていた。とても大事なことだと思った。本当に出会えてよかったと心から感じる素晴らしい作品でした。

 

余談として、シアタードラマシティのホールを出たところに赤いドレスでフラメンコを踊る女性の絵が飾られていて、終演後に目に飛び込んできてうわ~~!!と感動した。いつも飾られているのかたまたまだったのか分からないけど、それも印象的な思い出になりました。

 

 

ゴースト&レディ(四季劇場・秋)

原作のコミックが好きで、ミュージカル!?まさかの四季で!!?絶対行く――

ということで行ってきました。劇団四季は前に「クレイジー・フォー・ユー」を観ていてこれが観劇2回目でした。いや〜〜本当にすごかった……。 原作タイトルは「ゴーストアンドレディ」だから頑なにそう呼んでいたけど、今はこの舞台版のことは「&」表記で呼んでいる。

 

まずこの舞台セットから胸熱……!あの劇場だ!幕が上がるとより一層舞台で、劇場でやることにものすごく意味がある作品なんだとよく分かった。そして何よりあの美しいラストシーン、あの光景は劇場でしか味わえない。

具体的なあらすじの説明はここでは割愛してしまうのですが、これはまだまだ地方公演もあるから本当にいろんな人に見てほしい!もしくは原作を読んでほしい、上下巻完結でめちゃくちゃ面白いから……

 

登場人物雑感

谷原さんのフロー。清潔感のある静かな女性という印象なのに、どこか神秘的なオーラをまとっていて、なにより意志の強い瞳がものすごくフローのイメージにぴったりでした。黙っているときも周りを見渡して思考しているのが伝わってくる。自分のすべきことを常に考え続けている、そんな人物。

そして歌声が本当に素晴らしかった……!最初はグレイに助けられていたところから始まって、着実に成長を重ね自分の力で立ち向かっていけるようになり、ジョン・ホールとの最終対決はまさに覚醒、狂気的なくらいの激しい感情が伝わってきて……グレイを失ったときの絶唱、「今なのよ!」の叫びには心が震えた。

 

一方で、患者や看護婦たちに向ける優しい表情と、清らかな歌声が本当に素敵で……。夜中にランプを持って見回る姿の神聖な美しさ。ボブを看病するシーンではぼろぼろ泣いてしまった。(なんならそこで一番泣いてた)  ボブは原作から年齢設定変わってたけど、回復後のフローを慕っている様子が大きな忠犬みたいで微笑ましかったな〜。

 

萩原さんのグレイは、いや、なんか格好よすぎてすごかった……こんなんグレイのこと大好きになってしまう。どんな仕草も様になっていて、皮肉屋で茶目っ気もあって、なんだかんだで根が優しい男。ふとしたときに見せる影。

フローに向ける愛情の深さ。おとなしそうに見えて意外と肝の据わったフローに振り回されるところはコミカルでクスッとなるし、クリスマス会のダンスにどきっとしたり、一幕ラストの星空は本当に素敵で、2人の関係がだんだんと深まっていくのがよく感じられた。

フローはとても強い人で、立場が上がって責任が増していくとより一層周りに弱みを見せないようになっていくけど、グレイの前ではいつまでも悩みも葛藤もする等身大のひとりの女性でいられるんですよね……。

 

一幕ラストで話題をかっさらうデオン様!(思わず様付け) そもそも私は原作のデオンが好きで、どんな風に見せてくれるんだろう?と思っていたらめっちゃ素敵でしたね……舞台上に出てる間ずっとめろめろでした。グレイとのタンゴで結構長い尺とられてるのはちょっと面白い。ミュージカルあるある・悪役はタンゴしがち。

個人的には原作デオンの男の人格と女の人格がコロコロ切り替わるところにすごく魅力を感じるので、その辺りの設定が変わっていて明確に「女」とされていたのはえ!!!と思った。でもちゃんと意味のある改変だった。

自身が性別を偽って男として生きてきた・そうせざるを得なかったことへの葛藤、女であるがゆえに受けた理不尽への怒り。同じ女でありながら信念と理想のために突き進むフローの高潔さへのコンプレックス。それらがフローに執着する動機としてとても良かった。

しかしグレイとの決闘のラストにはめちゃくちゃロマンがある……。ここの2人は男女の何かが生まれる気配は明らかにないんだけど、だからこそ惹かれる。永遠の好敵手、互いに唯一の相手、性別の壁なく対等に自分にぶつかってきたグレイに殺されたことが、デオンには最後の救いだったんだと思う。

 

ジョン・ホール軍医長官。原作ではヒャッハー系というか海賊みたいな(!?)アクの強いザ・悪役なので結構キャラが変わってて驚いた!インテリ系というか……慇懃無礼、絶対に逆らえない圧と人の命をなんとも思わない残酷さのある、成り上がりの権力者としてリアル寄りな人物造形でこれはこれでありだなと思った。悪いことはめちゃくちゃ悪いし。部下を椅子代わりに四つん這いにさせてその上でティータイムするのはなんか笑ってしまう。

 

彼もまたフローを忌み嫌い排除しようとすることに、単に「嫌い」だけではない説得力が増していて良かったです。ただの小娘というなら無視しておけばいいのに、なぜそこまで徹底的に排除しようとするのか。貧しい身の上から手段を選ばずに成り上がって今の地位を手に入れて、それを(少なくとも金銭面では)何不自由なく育った貴族のお嬢さんに脅かされているという状況。

自分には選択肢がなかったのに、いわば貴族のワガママであえて看護婦という道を選んで、人々を救いたいと理想を語るフローはまさに正反対で、そりゃ相入れないよな……。もちろんジョン・ホールのしてきたことは擁護しようがないし許されないけど、彼には彼の地獄があり、もし生まれた環境が違っていたら。

それにしても女がやってきて改善されたのでは男は無能だったってことになる、みたいな理屈って現代でも全然ある話で、その進歩のなさには暗澹とした気持ちになる……作中はヴィクトリア女王のいる1800年代だよ。

 

 

走る雲を追いかけて

原作ではファンタジー・バトル要素が強く、勢いのある作画とストーリー展開が特徴的だけど、この舞台では生身の人が演じていることで全体にリアル寄りの描写が多くなっていて、特にフローをはじめとする看護婦たちの道のりが強く意識された。また脚本演出もそこにフォーカスしていたと思う。(表記は「看護婦」に統一してます)

何度かリプライズで出てくる「クリミアへ行こう 走る雲を追いかけて」のメロディーがすごく素敵で、終演後もずっと頭の中を流れていた。この曲が歌われるだけで泣けてくる……。海を越えて戦場に向かう看護婦たちの思いの強さ。過酷な環境や、待ち受ける困難への不安もあるけど、それ以上に使命を果たそう、自分たちの手でやりとげようという決意がびしばし伝わってくる。そして、まだ働く女性が少なく看護婦という職業への偏見もあった中で、その先駆者になるという誇りも。「走る雲を追いかけて」というフレーズがそんなはやる気持ちを表しているようで素敵だった。

 

看護婦団の1人であるエイミー(舞台版のオリジナルキャラ) にはすごく感情移入してしまった。はじめは真っ直ぐにフローに憧れて、患者にも真心で接している純粋ないい子なんだけど、なかなか要領よくやれるタイプではなく、仕事は失敗続きで。人に責められるよりも、自分のできなさと向き合うのって一番しんどいじゃん。いや人に責められるのは普通に嫌か、でも、自分でも分かってるのになんでできないのって感じるのはめちゃくちゃ辛いよね……。フローが優しくて正しくて立派であればあるほど突き刺さる。「あなたが眩しすぎて」 そういう女・女間の感情大好きだけど、観ている私の身にもグサグサ刺さってくる。

エイミーの選択は私としては悲しかったけど、否定はしたくない。彼女は彼女の道を選び、本人なりの幸せを手にした。それも人生だ。誰もがフローのように強くいられるわけじゃない。けどフローだって完璧超人ってわけじゃなくて、普通に傷ついたり悩んだりする1人の人間なんですよね……

ただアレックス(同じくオリジナルキャラ) (この作中で占める割合多し) に対してはお前〜〜って思うけどな!最後もなんか良いポジションにおさまってるし。原作フローだったら自分の女性としての幸せとかは全く意に介さなさそうだけど、このフローは色々考えてしまうのもわかるしリアルだなあと思う。

 

女性たちの戦い。社会からの無言の圧に、理不尽に、ときに苦しんでもそれでも折れずに立ち向かうひとの美しさというのが、この「ゴースト&レディ」から一番感じたことだった。あとやっぱり話がめちゃくちゃ面白いし、舞台ならではの演出がすごく素敵で観られてよかった!

名古屋公演もあるんだよね……ちょっと悩んでるけど行くとしたらまたダバダバに泣く覚悟をしておかないといけない。

 

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大阪で観劇(TABLEAU1回目)→翌日東京で観劇(ゴースト&レディ)というハードスケジュールだったけど、続けて観たことでいろいろ感じられるものもあってとてもいい体験だった。TABLEAUの感想は書くと長くなりすぎるから後半パートに絞っちゃったけど前半もめちゃくちゃよかったな……ひとつ挙げるなら「Bang Bang」が特に好きでした。けどどの曲も本当によかった~~~。

映像はどこにも残らないみたいだけど、きっと1か月2か月したらまた変わっていくんだろうなと思う、今このときにしか見られない柚香光さんの姿を観られたことにすごく価値があった。それと同時に、変化し続けているけど、柚香光さんはずっと柚香光さんだなとも強く思った。これからがますます楽しみ!!

 

 

映画『カラオケ行こ!』を観た

「爽やかな青春映画」「家族で気軽に観れる」みたいな感想を読むとえっ…………???てなる。否定したいんじゃなくて、そっか普通の人にはそうやって見えるんですね!?的な。

 

 

いや………やばくなかったですか??

 

 

原作は3年前くらいに読んでて、そのときの感想はめちゃくちゃ刺さるっていうよりは普通に「良いね~~」って感じだった。『ファミレス行こ。上』も読みました。和山先生のギャグセンスと独特の空気感が好きなんですけど、今作の主役ふたりの関係性については刺さる人にはとことん刺さるやつだなあくらいのテンションで眺めてたんですよね、今までは………。実写化するのは知ってたけど特に観に行くつもりはなかったのが、なんかすごいらしいと評判を聞いて急遽観に行ったんですけど、

 

 

実写の狂児と聡実くん

綾野剛は本当にすごかった。キャストが発表された時点ではビジュアル的にイメージと違うんだよな~と思っていて。それが、第一声を発した瞬間の表情や声のトーンや、すべてに「狂児だ………!」と衝撃が走って、そこから先はずっと違和感なく狂児にしか見えなかった。

動いているところを見るのは初めてのはずなのに、細かい表情やなんでもない仕草も全部「この人は間違いなくこういうことする」っていう納得感がすごい。原作のまんまコピーではなく、彼にしか演じることのできない独自の人物像で、なおかつ狂児以上に狂児というか……。

 

あの胡散臭い笑顔と聡実くんにダル絡みするところが個人的にツボで、「聡実くん肘、肘聡実ひじさとみ~」の意味わかんなさとダブルピースが好きです。

 

あんなにしつこく寄ってくるくせに肝心なことは何も教えてくれなくて、ある日突然ふらっといなくなってしまいそうな。絶対この人に関わり続けたらよくないって分かってるのにどうしようもなく惹かれてしまう、そういう説得力がすごい。

 

 

 

そして聡実くんもすごくよかった……。あれはかわいがりたくなるよね。原作だと可愛げないところがかわいいみたいな感じだけど、映画版の聡実くんはもう少し等身大の繊細な危うさが出ていて、クラスメイトや家族といるときのの空気感とか、モノローグはなくても今心の中でいろんなこと思ってるんだろうな……と伝わってくるのが絶妙だった。

 

狂児にからかわれて本音をぶちまけるシーンがすごく印象的で、ああこういう子だったんだと思った。言いたいことがあっても「そうじゃないんだけど反論してもな……」と俯瞰で判断してのみこんじゃうタイプで、大人びててさめてるように周りからは見られる。でも本当は合唱にすべてを懸けてきたという強い思いがあって、それを失うかもしれないことが怖くて、誰にも言えないから苦しいよね……わかるよ……。スマホの待ち受けが合唱部の集合写真なことにまた胸がキュッとなった。

 

 

 

組の人たちに怯えて狂児の腕にしがみつくところ意味わかんないくらいかわいかったな……。あとその場面でオレンジジュースに全然手を付けていないのを見せてからの、二人きりのカラオケ練習会では狂児の歌の最中に容赦なくジュース飲んでチャーハン食べてるって描写によさが詰まっている。

 

曲目リストを説明するときに初めて自分から近寄っていくのがかわいいし、それに対して狂児が「おっ?」って顔してから曲目リストではなく聡実くんをずーーっと(本当に長い間)見つめてて…………しかも聡実くんは気付いていない。本人を前にするとふざけたりはぐらかしたりするのに、本人に見えないところでいとおしそうな表情するんだよな、この人………。

 

 

聡実くんの歌

原作の感傷的にならず淡々と進んでいく独特の雰囲気が私は好きなんだけど、この映画は「青春時代の終わり」という要素が繰り返し強調されていて。わかりやすくエモさを出してくる演出なのでその辺りはちょっと違うなと思いつつ、しかしそういうテーマをバーンと出されるとやっぱり刺さる。卒業とともに映画を見る部は廃部になり、聡実くんのソプラノが失われ、ミナミ銀座が消え狂児が去る。巻き戻せないビデオテープとは二度と戻らない日々のことで。

 

ボーイソプラノの少年の変声期というモチーフ、少年から大人に変わっていくときの揺れる心とか、終わりが近づいているのを感じながら今あるもの全部を振り絞ってパフォーマンスをするというテーマが自分はものすごく好きだったのを思い出した。鎌谷悠希先生の『少年ノート』という作品が好きなんですよね……。

 

 

ももちゃん先生が口癖のように(というか困ったときに)言う「歌は愛やで」は、まさに聡実くんの「紅」なんですよね。声が掠れても高音が届かなくても、綺麗じゃなくても、あの歌が一番よかった。本当にすごかった……歌っているあいだに声がどんどん出なくなっていくのが痛いくらいに分かって、少年期の終わりを燃やし尽くすような、人生でたった一回きりの歌、それが表現できてしまうんだな……。あの歌を聴くことができたっていうのはすごい体験だった。そしてドアの前で聡実くんの歌を聴いている狂児の表情、それを愛と呼んでもいいですか。

 

 

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聡実くんは狂児にだけ心を許してしまっているけど、狂児はやっぱり別の世界の人間で、ヤクザと中学生という二人の関係ってかなり危うい。本来なら人生が交わることはなかったはずなのに、出会ってしまったが最後忘れようにも忘れられない。

 

原作の再構成がうまかったこと、生身の人間が演じていること(素晴らしい演技だった)、たぶんそういうのが作用して、私の場合初めて原作の『カラオケ行こ!』という作品を本当の意味で理解できた気がします。なんなら「青春」要素が強調されたことが、作品全体に爽やかさを加えているんだけど、同時にそんな青春の中にある二人の関係の異質さが際立っているようにも感じた。心温まる友情なんてものじゃない、もっと強烈な……。「紅」はふたりのイメソンだったのか……とも初めて思った。

 

 

 

原作の名刺を見つけるところが好きだったから、都合上難しいとはいえ演出が変わっていたのは少し寂しかった。で、今読み返していたら真っ赤ないちご……以前の私はどんだけ読み落としていたんだってなったよ。そして『ファミレス~』の聡実くんが消したいもの。もう、どうしたらいいんですか……