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@matiya_a

旅行の話 第5回 美術館編

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気が付けばこのウィーン旅行から1年が過ぎていました。時の流れの早さよ……

さて、約1週間の旅行の中でも特に印象に残っていた・個人的に満足度が高かったのが美術館だったんです。音楽の街として有名ですが絵画もすごい!かつて栄華を極めたハプスブルク家の帝都であり、そして19世紀末にはクリムトエゴン・シーレに代表される世紀末・モダン芸術が花開いた街。そんなウィーンの美術館について今回は書いていきます!

ちなみに美術館の展示物は基本的に撮影可で、ものによって撮影禁止の注意書きがされているという感じでした。最近は日本でも「一部撮影可」という展覧会が増えていますね~

■美術史博物館(Kunsthistoriche Museum)

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美術館の前にそびえるマリア・テレジアの像。オーラがすごい!

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エントランス。床の幾何学模様がモダンで洗練された雰囲気です

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柱のきわにある、正面を向いて立つ2人の女神の壁画はクリムトが描いたもの

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荘厳な装飾が施された館内。展示室が奥へ奥へと続いています

 いやもう……これが美術館だなんて信じられなくないですか……???美術品を見る前にまず建物がすごすぎて圧倒される……。館内はかなり広く、ここは宮殿か!?というくらいたくさんの展示室があります。ちょっと迷子になりそうでした。

美術館の中央は吹き抜けになっていて、「世界一美しいカフェ」とも言われているミュージアムカフェがあります。あまりいい写真が撮れなかったのですが実際はすっごい素敵でしたよ!

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しかし私の場合はカフェでお茶をする暇もなく、ひたすら館内を歩き回っていました。昼に行って17時の閉館ぎりぎりまで粘りましたがそれでもまだ半分も見られなかったと思います……。数日かけても回りきれないんじゃないかというくらい、とにかく膨大な数の、そしてかなり貴重な美術品コレクションが展示されていました。

 

まず1階では古代ギリシャやローマ、エジプトなどの美術品が展示されていました。

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これは古代エジプトの展示室の一部です。壁や柱など、部屋そのものがエジプト風に作られていて面白いですよね。焼き物や装飾品といった出土品、ヒエログリフ楔形文字が刻まれた石板などが所狭しと並んでいます。

ギリシャやローマの部屋では皇帝や英雄?の胸像、彫刻、ローマ皇帝が描かれた当時のコイン、レリーフなどが見られました。なんか……2000年前とかの時代にはすでにこんなにハイレベルな芸術が生まれてるんですよね……昔の人凄すぎない!?

「美術史」博物館ということで絵画中心なのかと思っていましたが、こういった古代の遺物のようなものもかなりの数が展示されています。ちなみにこの美術史博物館と向かい合って「自然史博物館」という施設があり、こっちはノーマークだったのですが鉱石コレクションがすごいという情報を見ました。いいですね~

www.wien.info

 

訳も分からないままとりあえず1階を見て回っていたのですが、いや待ってこのペースだと全然絵画とか見れないじゃん!と、ある程度見たところで気付いたため西洋絵画のエリアに移動することにしました。

 

*** 

絵画は代表的なところではブリューゲルクラーナハルーベンスなど中世から近世にかけての画家が多い印象でした(見られなかっただけでもっと現代よりの作品もあったかも)。キリスト教絵画や神話を題材にした作品や王侯貴族の絵が多く、日本では実物を見る機会があまりないので新鮮でした。教科書や歴史書に載っている肖像画の実物なんかもあります!

特にキリスト教絵画を見るのは結構好きなんですが、何も説明がなくても青い衣を着ているのは聖母マリアとか、羊が描かれていたらイエスを表しているとか、そういった文脈やが分かってくるとすごく楽しいです。また同じ題材でも画家によっていろんな表現があって、その違いが面白かったり。 

中でも印象に残ったのはクラーナハのユディトでしょうか。クラーナハはユディトを題材にした絵を何枚も描いていて、この美術史博物館でもほぼ同じ構図のものを2点見た記憶があります……ホロフェルネスの首の断面の生々しさが強烈でした。

 

この西洋絵画のエリアが本当に満足度高くて……ツイッターでも「ここに住みたい」とか言ってましたが、一日中ここにいて好きなだけ美術品を見て、疲れたらカフェで休憩してまた館内を見て回る、みたいな優雅な生活をしてみたいですね……。

館内の写真はあまり撮っていないので(見るものがありすぎて撮る暇がない)ウィーン市観光局のサイトを載せておきます。館内の雰囲気伝わるかな~ すごく素敵なところですよ!

www.wien.info

 

 

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余談①

古代ローマのコインに書かれている文字を読んでこれはネロだ!これはカリグラかな?ちょいちょい知ってる名前があるな~とやっていたところ、閉館後に外に出てから真実を知りました。

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Böse Kaiser ="悪い皇帝"展 だったというオチです

 

余談②

クラーナハの絵画について、ユディトで合ってるよね?とググったところ

 ↓

omochi-art.com

どうも剣を手にしていたらユディト、銀皿の上に生首を載せていたらサロメみたいです。間違い探しかな??

 

余談③

これいいな~!とピンと来てポストカードを買った作品。

このとき意味はちゃんと理解してなかったんですが、なんだか素敵…

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Antonis van Dyck, Mystische Verlobung des seligen Hermann Joseph mit Maria

ヴァン・ダイク『福者ヘルマン・ヨゼフの夢』

 
■分離派会館(Sessecion)

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見るからに斬新なデザインの建築ですよね。19世紀末にクリムトを中心に結成された新進芸術グループ・ウィーン分離派の本拠地となったのがこの分離派会館です。

植物をモチーフとした金の装飾が特徴的で、入り口の上の方にいるのはギリシア神話メデューサらゴルゴーン三姉妹。さらに上部には分離派のスローガン(時代には芸術を、芸術には自由を というような意味の文章)が刻まれています。実は大学の講義で少しだけかじったことがあるので、このへんちょっとわかる~!とテンション上がります。

bijutsutecho.com

中に入ると分離派についての解説や資料、そしてクリムトの『ベートーヴェン・フリーズ』があるほかには、現代のアーティストの作品を展示するギャラリーとして使われているようで、作品数は少ないです。

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分離派が刊行した月刊誌「Ver Sacrum」や、書簡などの資料

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地下室に展示されている『ベートーヴェン・フリーズ』

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ベートーヴェン・フリーズ』はクリムトが手がけた壁画です。金の甲冑の騎士が、死や病、欲望といった邪悪の闘いを経て、最後に愛し合う男女と「歓喜の歌」の合唱へ……という、ベートーヴェンの第九番交響曲を題材としたストーリーが描かれています。この部屋にはヘッドホンの音楽プレイヤーが用意されていて、実際に第九を聞きながら鑑賞できるようになっていました。

ベルヴェデーレ宮殿(Schloss Belvedere)

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お庭が広い! ここは本物の宮殿で、上宮部分が美術館として使用されています。

館内もすっごく綺麗です。

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1階は中世、2階は19世紀前半の絵画が、3階は19世紀後半~現代の絵画が展示されています。(ちなみにオーストリアでは日本で言う1階はErdgechloss=地上階といい、その次に1階、2階…という数え方をします。ややこしいのでこの記事では日本基準で地上階=1階と書いていきます!)

1階のは特別展と書かれていた気がするのでたまたまだったのかもしれませんが、下の階からちょうど時代順になっていてよかったです。こんな感じで中世の宗教画がたくさん展示されていました。写真の中にかなり破損してしまっている絵がありますが、当時はまだ木の板に絵を描いていたんですよね……この展示室では定期的にミストが噴射されて、湿度と温度が一定に保たれているようでした。本当に何百年も前の絵画を見ているんだな……と不思議な気持ちになりました。

 

そして2階へ!

この美術館を訪れる目的は大抵クリムトだと思うんです。あと印象派とか好きな人が多いじゃないですか(ディスってるわけじゃないです。印象派も見るよ)、でも私はこのあたりの絵がかなり好きなんですよね……。ふんわりとした肌や衣服の素材の質感のすごさとか、緻密な描き込みとか、見ててああ~~ってなります。ちょっと古典的で上品な雰囲気が好きです。

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フランツ・ヨーゼフとエリザベート皇帝夫妻、死の床のフランツ・ヨーゼフ。

エリザベートは本当に美しいですね。

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このアメリングという人の絵がすごく好きなんですよ……!過去に別の美術展で見て名前を覚えました。ふんわりと色づいた頬、つややかな髪と肌、そして何より透き通った綺麗な瞳が印象的です。光の表現が綺麗なんですよね……。ほれぼれします。



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突然現れためちゃくちゃ見覚えあるやつーーーー!!!

えっこの絵ってここにあるんだ!!??? ガイドブックには一言もそんなこと書かれてなかったのに……クリムトに押されて影が薄くなってしまったのか……。それにしてもかなりのスケール!

 

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王家の肖像画や王宮に飾られていた絵画、家具などが一緒に展示されていました。

どちらもマリア・テレジア一家の絵です。2枚目はたぶん「訓練は順調ですか?」みたいな感じで、子供たちを連れて自ら軍隊の視察に訪れている場面だと思います。マリア・テレジアは10人以上子供を産んでいて、たくさんの子供を育てつつ政治もバリバリ行ったスーパーウーマンですね。

 

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ここは作品が展示されているわけではなく、ベルヴェデーレ宮殿の中央にある広間でした。本当に宮殿だな~という美しさ……ちょっとした舞踏会とか開けそうです。

 

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近現代のゾーンではクリムトの作品がたくさん展示されています!

 

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『ユディトI』

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『接吻』

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『家族』

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『花嫁(未完)』

『ユディト』『接吻』はクリムトの作品の中でも特に有名ですよね。『接吻』は門外不出で、ここでしか見ることができません。クリムトは金箔を多用する作風でよく知られていますが、晩年には金を使わない表現を模索していたようです。女性の体の表現がすごい……

クリムトの絵画を見たい!という人にはこのベルヴェデーレ宮殿がかなりおすすめです。またそれ以外にも作品点数が多く、近現代の画家の絵画を落ち着いて鑑賞できる美術館なのでとても満足度が高かったです! 美術史博物館とベルヴェデーレ宮殿はこの旅行の中でもトップクラスの私のお気に入りスポットです。

他に気に入った絵画をいくつか載せておきます。

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いい表情だ…

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ウィーンの朝市の風景

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私は睡蓮よりこっちが好きです。クロード・モネ作 コックのおじさん(癒し系)

 

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お土産にアートブックを買いました!
ウィーンの美術館に所蔵されているさまざまな作品が、表紙のような形でパターンになって収録されています。

ここのミュージアムショップでは、所蔵作品のポストカードやクリムトのグッズ(トートバッグやTシャツ、折り畳み傘とかいろいろ)のほか、色鉛筆や絵の具、絵の描き方の本が売られているのが少し変わっていて面白かったです。絵を見るだけじゃなくて描かせようとしている……!

 

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